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『ワンピース』10年以上前の「考察本」は当たっている? 答えあわせで意外な「感動」

単行本は100巻超えの『ONE PIECE』。巧みに散りばめられた伏線や謎を解読する「考察本」もまた人気です。10年以上前に刊行された考察本は果たして当たっていたのでしょうか。答えあわせをしていきます。

玉石混交の『ONE PIECE』考察本は今読み返すとめちゃくちゃ面白い!

(画像:写真AC)
(画像:写真AC)

『ONE PIECE』(著:尾田栄一郎)の連載が始まり、早四半世紀が経過。単行本は100巻以上。地続きのストーリーでこれほど長期にわたって紡がれてきたものは世界的にも少ないといえるでしょう。

 さてそんな『ONE PIECE』ですが、連載が長期化するにあたり伏線や今後の展開を予想する「考察本」というものが非公式ながら続々と刊行されています。古くは2000年代に登場しており、そのなかで考察されていた今後の展開の答え合わせが可能になりました。果たして当時の「考察」は当たっていたのでしょうか?

 なお「考察本」の多くは圧倒的な『ONE PIECE』愛にもとづいた精緻な論理考証が行われているため、こちらとしても「答え合わせ」に必要な知識を補填するべく、ファン歴25年の『ONE PIECE』研究家(自称)にも協力してもらっています。

●「ダダンはルフィの母親ではないのか?」

 2009年に刊行された「考察本」に登場する説がこちら。ダダンとは単行本45巻で初めて名前が明かされた人物です。どうやらルフィと非常に近しい間柄らしいということで、ファンの間でも「何者なのか」という議論が行われました。愛読者ならお分かりの通り、この説は立証されませんでした。ダダンとはルフィとエースの仮親である山賊の頭です。

「とはいえ母親説が可能性として浮上するのは自然。同書ではガープとの友人という説も提唱しているので決して間違っていたとはいえない。」 (自称『ONE PIECE』研究家)

●「10人目の仲間はバーソロミュー・くま」

 こちらは2010年に刊行された人気考察本に登場した説。ルフィがゴムゴム(5656)の実、チョッパーがヒトヒトの実(110110)の実、ロビンがハナハナ(8787)の実、ブルックがヨミヨミ(4343)の実ということでニキュニキュ(2929)の実の能力者であるバーソロミュー・くまが10人目として仲間入りするのではというもの。単行本の質問コーナーでも指摘されており、ほぼ確定かと思われていましたが、(ルフィを含めて)10人目の仲間はジンベエでした。

「ニキュニキュの実の説はまだ生きているはず。これも言われていることだが、フランキーがその能力を継承する可能性もある。また錦えもんがフクフク(2929)の実であり、これがなんとも踊らされている気分で最高」(前出『ONE PIECE』研究家)

●「ルフィの腕にはエースの意思を受け継いだ入れ墨が入っているはず」

 こちらも2010年刊行の「考察本」の説。エースの入れ墨「AS(×)CE」は単なるスペルミスではなく実はサボの海賊旗のシンボルを含むものだと判明し、ファンを大いに感動させました。そこから派生し「新世界以降、ルフィが七分袖になったのはエースとサボの意思を継いだ入れ墨を隠しているからだ」という説を同書は唱えたのですが、上裸のシーンはこれまで何度もあり、残念ながら入れ墨は確認できていません。

 ということで少なくとも5年以上前に刊行された『ONE PIECE』考察本の答えあわせをしてきました。他にも2015年刊行の考察本では「ゾウの島は“造”を意味するのではないか?」という傍証バッチリの指摘もあったのですが、結果としてゾウはそのまんま「象」だったという我々の想像をはるかに超えてくるものでした。当たっていようとなかろうと考察それ自体が実にスリリングであり、『ONE PIECE』の選ばれなかった物語の分岐を想像させるものばかり。答え合わせができる今こそ読むべきものであったと確信しています。

 最後に今回協力してもらった『ONE PIECE』研究家(自称)の今推している持論を紹介しましょう。

「第1話でゴムゴムの実を食べたルフィが『おれは一生海から落ちない』と言っている。『船から』の誤植かと思いきや、何刷になっても修正されていないということは……ワンピの世界は海の下がある、ないしは平面の可能性がある」

 こちらで確認しましたが普通に「船から」と直されている版もありました。……間違っていても「考察」は楽しければ、良いのです。

(片野)