『竜とそばかすの姫』は意見の異なる人と一緒に観ることで完成する? 「金ロー」で初放映
細田守監督の大ヒット作『竜とそばかすの姫』が、「金曜ロードショー」で初放映されます。家族みんなで楽しめる映画を標榜している細田監督だけに、いろんな世代が視聴する「金ロー」と細田作品は相性がいいようです。もしも、自分が主人公だったらどうするか? いろんな人と意見を交わすことで、細田作品はより理解が深まるのではないでしょうか。
中村佳穂さんが歌う劇中歌が大きな話題に
2021年7月15日に公開され、大ヒットした劇場アニメが早くも地上波テレビに登場します。2022年7月8日(金)の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)では、細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が放送枠を30分拡大して、ノーカット初放映されます。
※「金曜ロードショー」の放送は休止となりました。同作の放映日は改めて告知されるとのことです。
コロナ禍にありながら、『竜とそばかすの姫』は主人公を演じたシンガーソングライター・中村佳穂さんが歌う劇中歌が話題を呼び、興収66億円の大ヒットを記録しました。細田監督作品史上最大のヒット作となっています。
50億人ものユーザーが参加する仮想空間「U」の壮大かつカラフルな世界観が、観る者を圧倒します。常田大希さんが作詞&作曲したテーマ曲「U」も、とても印象的です。
ですが、その一方では主人公の行動に批判的な声も一部では挙がりました。賛否両論を呼ぶ、細田監督の作品性について考えてみたいと思います。
冴えない女子高生が、ネット空間で「歌姫」に変身
高知県の田舎町で父親とふたりで暮らす女子高生・すずが主人公です。すずが幼い頃に、優しかった母親は水難事故で亡くなっています。以来、すずは内向的な性格に育ちました。
すずは人前でモジモジしてしまう自分のことが好きになれません。歌を作ることは好きなのに、人前で歌うことができないのです。そんなすずは、インターネットに詳しい親友のヒロちゃんにサポートされ、仮想空間「U」の世界で、理想の女性・Belleへと変身を遂げるのでした。
Belleは自作した歌を、「U」の世界で高らかに歌います。「自分の存在を認めてもらいたい」という承認欲求が満たされたことで、現実世界のすずも明るくなっていきます。主人公のひと夏の冒険が、日常生活を変えていくことになります。
正体不明の歌姫として、Belleは「U」の世界で大いにバズります。多くのファンからの声援を浴びるBelleですが、ライブ中に逃げ込んできた「竜」というキャラクターに遭遇し、物語は意外な方向へと展開していきます。
訳ありそうな「竜」のことが、すずは気になって仕方ありません。父親との関係がギクシャクしているすずは、「竜」も深刻な悩みを抱えていることを察したのです。
なんとかして「竜」を助けたい。実名も顔も分からない相手のために、すず/Belleは必死になります。知らない相手のために、命がけになる姿は、かつて川で溺れた男の子を助けようとして亡くなったすずの母親とそっくりです。