『ガンダム』シャアはサイコミュ兵器が苦手だった? 実は万能じゃないニュータイプたち
人気アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する「ニュータイプ」。亜光速で飛来するビーム兵器を避けたり、ファンネルを飛ばして相手を四方八方から攻撃したり、未来予知したりとなんでもありに見えますが、実は得手不得手があるのではないでしょうか。
人間の「個性」と同じ?
アニメ『機動戦士ガンダム』には「ニュータイプ」と呼ばれる覚醒した人間が多数登場します。「時空を越えた非言語的コミュニケーション能力を持ち、超人的な直観力と洞察力を持つ」のがニュータイプで、宇宙空間でもテレパシーで相手と話したり、亜光速のビームを避けたり、少し先の未来を予知したりします。
「なんでもあり」に見えるニュータイプですが、実はそうでもないようです。例えば、アニメ『機動戦士ガンダム TwilightAXIS(トワイライトアクシズ)』に登場するアルレット・アルマージュは、開発能力に特化したニュータイプであり、モビルスーツの操縦などは行いません。開発したモビルスーツを、シャアに操縦させるのです。
冒頭で書いた「未来予知」は、アムロがア・バオア・クーで、ホワイトベースのクルーを助けるために使いましたが、ほとんど見られることのない能力です。いつも未来が予知できるなら、劇場版アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は、あのような展開になっていなかったでしょう。能力があっても自在に使いこなせるものではないようです。
また、ジオン軍はモビルアーマー・エルメスに、サイコミュという装置がないと使えないビットを搭載し、ビーム砲を備えた多数のビットで同時に多くの敵を攻撃していました。でも、エルメスのパイロットは、実戦経験に乏しいララァ・スンで、その横にいる実戦経験豊富なシャアは、エルメスに乗せてもらえないのです。
つまり「シャアはサイコミュ兵器の扱いがあまり得意ではなかった」のでしょう。だからジオングに搭乗したときに「見える! 私にも敵が見えるぞ」と喜んでいたのだと思われます。シャアはアクシズからエゥーゴに技術移転をしていますが、百式にビットやファンネルを搭載したりはしていません。苦手で扱いたくなかったのだと考えられます。
とはいえ、シャアはサザビーではファンネルを使いこなしています。これは技術進歩で扱いやすくなったのか、サイコフレームが助けてくれたのか、あるいはその両方かもしれません。
ニュータイプ能力が「安定して発揮できる」わけではなく「戦闘以外でも特殊能力持ちはいて」「得手不得手が存在する」のだとすれば、もしかしたら、意外な人物がニュータイプであった可能性も出てくるのではないでしょうか。
例えばギレン・ザビは、自分とニュータイプの女性の遺伝子を掛け合わせて、グレミー・トトやプルシリーズを生み出したという説があります。
これは、ギレンが自身をオールドタイプだと思っていたなら、考えにくいことです。
ギレンは自身が下す政治的判断について、確信があるように常時描かれています。彼がアムロのような、未来予知系ニュータイプであるなら、その確信は理解できます。
全てでないにしても、近い未来に起こりそうなことは、ある程度予見することが多くあり、そのニュータイプ能力を持ってサイド3の権力を掌握したのであれば「自分が選ばれた存在」と感じる根拠になると思うのです。
ただ、その先読み能力はあったとしても限定的かつ、近い未来に限られ、自在に制御もできないので「レビルが脱走する」「ガルマが戦死する」「キシリアに暗殺される」など、肝心なところで不備があったのではないでしょうか。
このように「劇中でニュータイプだと認識されていないニュータイプも存在する」かもしれないと考えると、見方も変わるかもしれません。例えば「宇宙戦闘機の時代に、人型兵器が有効だと考えた技術者」などは、ニュータイプであったかもしれないと、筆者は妄想する次第です。
(安藤昌季)