ガンダムって本当に性能いいの? 出力、推進力…身近なモノと比較してみた
人気アニメ『機動戦士ガンダム』はリアリティを重視したロボットアニメ。それだけに現実でも使われている用語も見られます。ここではモビルスーツの性能表記に使われている用語について解説します。
ガンダムの出力は凄いの?

1979年に放映され、リアリティを重視した世界観とストーリーで、未だに新作が作られ続ける人気ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』。『ガンダム』と言えば、人型戦闘兵器モビルスーツが印象深い人も多いことでしょう。
でも、モビルスーツの性能表記は、一般にはなじみがない用語だらけです。例えば、主役メカである「RX-78-2 ガンダム」は「ジェネレーター出力1380kW」「総推力5万5000kg」「ビームライフルの出力1.9MW」のように説明されますが、「kW」や「MW」がどれほど凄いものなのか、実感できる人は少ないのではないでしょうか。
「kW(キロワット)」とは、電球などで身近な「W(ワット)」の上の単位です。1000ワットが1キロワットですから、ガンダムは138万ワットの出力があります。
そう言われてもピンとこないでしょうから、仕事率で考えてみます。プロの競輪選手は全力走行時に2kWを発揮しているそうです。ガンダムはその690倍の出力を持っています。
ご家庭の平均的なエアコンが3kWですから、ガンダムは460倍の出力があります。車は40~200kWですから、ガンダムは大型トレーラー7台分の出力があると考えると、イメージしやすいかもしれません。新潟県柏崎市の原子力発電所は原子炉1~7号機の合計で821万2000kWなので、ガンダム5950機分の出力です。
ちなみに1kW=1.3596馬力なので、ガンダムのジェネレーター出力1380kWは1876.2馬力です。旧日本軍の四式戦闘機「疾風」並みの出力ですが、普通に考えると、ジェット機よりも遥かにパワーがないことになります。
なお、昔の書籍には6万5000馬力という設定も掲載されています。6万5000馬力とは、4万7807kWです。1380kWの34.6倍あります。これは、どう考えたらいいのでしょうか。
ガンダムの「出力」とは、どういう基準かは明示されていません。1380kW=6万5000馬力でもありませんので、1380kWは直接手足を動かすパワーの強さではないのでしょう。
また、1380kWがどういう条件での数字なのかも不明です。例えば1分辺り1380kWを発電するということなら、1時間で8万2800kWの出力となります。こんな解釈で、瞬間的な最大出力は4万7807kW(6万5000馬力)というなら、違和感のない仕事量になりそうです。
なお、ビーム兵器の出力で使われるMW(メガワット)は、kW(キロワット)の上の単位で、1MW=1000kWです。ビームライフルの出力は1.9MWとのことですから、つまり1900kW。ガンダム本体の出力1380kWを上回る出力を発揮していることになります。
ビームライフルのエネルギー自体はホワイトベースでチャージしているようなので、モビルスーツ本体のジェネレーター出力は直接関係しないのかもしれませんが、出力が高いと、強力なビーム兵器が使えるという設定もあるので、ビームライフルにチャージされたエネルギーを発射するのに、別建てでジェネレーター出力を使うのだと思われます。
ちなみにシロナガスクジラの瞬間最大出力は2.5MWなので、ビームライフルよりも出力があります。500系新幹線の編成出力は18.2MWなので、ビームライフルの10倍近い出力ということに……500系、すごい。
なお、ZZガンダムに搭載されている「ハイメガキャノン」は50kWの出力です。ハイメガキャノンはコロニーレーザーの20%の出力という設定があるので、コロニーレーザーは250MWということになります。柏崎原子力発電所はコロニーレーザー3.3機分の出力を持っていることになりますね。
これも例によって「計測条件」がわからないので「コロニーレーザーって、意外とパワーがなくね?」と決めつけられるものではありませんが、興味深い数値です。
なお、ガンダムで「推力」として使われる表記は「kg」ですが、航空機では「kg」は重量を現す単位で「kN(キロニュートン)」が使われます。1kN=101.9368kgですから、ガンダムの5万5500kgは約540kN。自衛隊が採用した、F-35 B戦闘機のエンジン推力は最大182.38kNなので、ガンダムは2.9倍の推力を持っていることになります。
こちらも、ガンダム側の計測条件がわからないので、直接的な比較になっているかどうかは、全くわかりませんが、現実の同一単位と比較することで、考察しがいがある結果になったと考える次第です。
※本文を一部修正しました(2022年7月25日11時35分)
(安藤昌季)