ロボットアニメの新常識生んだ「ウォーカー・ギャリア」の衝撃 背景には「クリスマス」が?
ギャリア最大の武器が「ICBM投げ」だった理由
ギャリア登場の理由は他にもありました。それは本来の主役機であるザブングルのデザインです。劇中に登場するウォーカーマシンの基本的なデザインと、ザブングルには大きな差異がありました。その理由は本作がもともとは宇宙を舞台にした物語でしたが、途中で加わることになった富野監督により、地上を舞台にした西部劇調の物語に変更されたからです。
そのため、ウォーカーマシンというカテゴリーのなかでザブングルだけがデザイン的に浮いてしまうことになりました。そういった事情で富野監督は早い段階からギャリアの登場を決めていたそうです。
ギャリアのデザインは富野監督のアイデアをメカデザイナーの大河原邦男さんがまとめたそうですが、同時期に同じサンライズで製作していた『太陽の牙ダグラム』の登場兵器であるコンバットアーマーに似てしまったため、キャラデザインの湖川友謙さんが大幅な修正を加えて決定稿としました。
こうして完成したギャリアは主人公機にしては珍しいマッチョな体形で、本作の世界観に添ったデザインの機体となります。主役であるジロンが、それまでのロボットアニメの主人公にはない丸顔だったこととあわせて、本作独自の世界観構築に一役買っていました。
本作での活躍も、時にはザブングル以上のコミカルさを見せたかと思えば、逆に力強い活躍シーンを見せるなど、人気の高い主役機だったと思いますが、オモチャの売り上げは予想以上に悪かったそうです。当時の分析では、分離後のデザインがザブングルと違って車にも飛行機にも見えなかったからと言われていました。
そして、さらに悲劇的だったのがバンダイのプラモデルシリーズが不調で、主役機であるにもかかわらず発売は1/144だけで、1/100は販売されなかったことです。もっともプラモデルの販売不振の理由は人気面というより販売戦略によるところが多く、本来なら一番最初に発売するはずの主役機ザブングルの発売を年末まで繰り下げたことが原因でした。
これにより未発売に終わった1/100ギャリアは、2008年に『R3 1/100ウォーカー・ギャリア』として発売されるまで、25年もの間、ファンには幻の商品となります。
ギャリアの武装はライフルやバズーカといった一般的なものから、ロケットランチャーながら使用後は投擲武器にもなるブーメランイディオム、アニメ本編では使われなかった両肩にマウントする5連装ミサイルランチャーといった一風変わったものまでありました。
しかし、ゲーム『スーパーロボット大戦シリーズ』をプレイした方には「ICBM投げ」のインパクトが大きいことでしょう。これは本作第49話の最終決戦で、敵のICBMを着弾前に受け止め、それを敵艦に投げ返したというエピソードを技として再現したものです。
敵艦を撃破するほどの破壊力ですから、ギャリアの最高威力の武器になるのは仕方ありません。さらにゲームではギャリアは乗り換え可能なため、各キャラのリアクションがそれぞれ新規録音されていました。ちなみにアニメでは大爆発は起こりますが、乗組員は真っ黒でボロボロになった程度で生きています。ギャグ要素の濃い本作ならではの名シーンでした。
このようにギャリア自身を語るエピソードもあるのですが、これ以降に2号ロボを定番化させたという点だけ見ても、アニメ史に残る功績を果たした歴史的な主役機といえるでしょう。
(加々美利治)