「砂漠ではスーツがいい」『MASTERキートン』に学ぶサバイバル術3選
『MASTERキートン』の主人公・キートンは、元イギリス陸軍SASのサバイバル教官という異色の経歴を持つため、作なかでもしばしば意外な方法で危機を乗り越えています。この記事では、もしもの時に役立つ、キートンのサバイバル術を振り返ります。
絶体絶命の状況でもキートンは活路を見出す
浦沢直樹先生の『MASTERキートン』(脚本/勝鹿北星・長崎尚志・浦沢直樹)の主人公・平賀・キートン・太一は、一見さえない中年男といった風貌ですが、実はイギリス陸軍SAS(特殊空挺部隊)でサバイバル教官まで務めた元軍人という、スゴい経歴の持ち主です。
サバイバル(生存術)とは作中で説明されているように「ろくに武器も持たずに敵地に潜入し、現地にあるものを利用して、戦闘、脱出をこなす特殊技術」。これは、災害をはじめ、いつ何が起こるかわからない時代を生きる私たちにもきっと役立つ知識に違いありません。今回は、そんな『MASTERキートン』のサバイバル術を振り返ります。
●「砂漠のカーリマン」で、極限で生き抜く知恵を知る
数あるエピソードのなかでも人気の高い「砂漠のカーリマン」と、その前編にあたる「黒と白の熱砂」には、極限状態で生き残るテクニックが満載です。
遺跡調査に関するトラブルに巻き込まれ、タクラマカン砂漠の真ん中に身ひとつで置き去りにされたキートンと、遺跡調査隊員たち。直射日光のもとなら2時間で体液が沸騰して死んでしまうとされるタクラマカン砂漠でのサバイバルですが、もちろん、そこまで特殊な状況でなくても、私たちがいつ出会うかもしれない危機にも応用できそうです。
まずは、服装。キートンは砂漠に、いつものスタイルであるスーツ姿で来たため、調査隊からは当初、ズブの素人扱いをされました。しかしこのスーツ姿、実は灼熱の砂漠ではベストな選択で、背広に長袖、長ズボンは直射日光を避け、通気性もよいのだそうです。暑い場所にはTシャツ短パン…など軽装で出かけがちですが、素肌に暑い日差しを受けるのはNGなのです。
砂漠では水の確保は最重要です。作なかでも「強烈な日差しと、焼けた大地が、人体から水分を絞りとってしま」い、わずか15%の脱水でも死に至るとされています。ではキートンはどうやって喉の渇きを癒やしたのでしょう。
まずは、石ころ。口に入れてしゃぶると唾液が出てくるのだそうです。また、木の根を掘り起こしてかじり、わずかな水分を補給します。さらに、ジャコウネズミの血液を口にすることも。血液は、水、塩、タンパク質の完全栄養食なのだそうです。もちろん、軽々に野生動物の血を口にすることはできませんが、最後の最後には思い出してもいいかもしれません。
さらにキートンは自らも水をつくり出します。砂漠に穴を掘り、防水ポケットの内側から破りとったビニールを袋状にして底に設置し、さらに穴をビニールで覆ってから皆にこう言うのです。「今から小便は、このビニールをどけて、穴のまわりにしてください」。これは一種の天然浄溜器ということで、見事に喉を潤すほどの水を手に入れることができたのです。
過酷な砂漠を生き延びたキートンの姿は、まさしく「砂漠のカーリマン(英雄)」でした。