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声優・小林清志さんの「次元大介」につながる重要キャラたち ずっと流れてたテレビCMの声も

次元の生き方と重なるダンディズム

「次元大介役の小林さん」のイメージをさらに強くした、『ルパン三世 PARTIII』Blu-ray BOX(バップ)
「次元大介役の小林さん」のイメージをさらに強くした、『ルパン三世 PARTIII』Blu-ray BOX(バップ)

 この後、『ルパン三世』は1977年に第2作が制作されることになります。その理由は、再放送で人気が徐々に高まってきたからでした。この間の小林さんの代表作ですが、アニメよりも特撮番組での活躍が目立っていたと思います。

『宇宙猿人ゴリ』の宇宙猿人ゴリ、『快傑ライオン丸』のゴースン、『風雲ライオン丸』のマントルゴッド、『円盤戦争バンキッド』のグザレ司令といった敵の大ボス役を演じていました。威厳のある声は聞くものの背筋をピンっとさせる緊張感ただようものがあったと思います。

 それとは別に、この時代の小林さんの声をもっとも聞いたのはCMだったかもしれません。「わんぱくでもいい たくましく育ってほしい」という丸大ハムのCMは、当時の流行語にもなったもので、長期に渡って小林さんの声で流れていました。

 シリーズ最長の3年間で155話も製作された第2作は、もっとも有名なルパンシリーズとなります。そして、その人気の高さから再シリーズ化も早く、1984年に『ルパン三世 PARTIII』というタイトルで第3作は製作されました。この時の小林さんは51歳です。

 この当時の小林さんは「次元大介役の……」と言われるほど、次元が代表作であり、渋い演技がもっとも似合う年代だったかもしれません。そして、ナレーションでの出演が増えた時期でもありました。

 ナレーターとしての仕事はアニメだけでなく、『西部警察(シリーズ)』(1979~1984年)や『ナイトライダー』(1987~1988年)といったドラマ作品、特撮作品の『仮面ライダーBLACK』(1987年)などでも重低音で緊張感のあるシリアスな声を聞かせてくれています。

 もっともファンには『勇者王ガオガイガー』(1997年)のナレーションがもっとも印象的だったかもしれません。「君たちに最新情報を公開しよう」と「これが勝利の鍵だ!」は淡々と話しているだけなのにインパクトは絶大で、作品を象徴するセリフのひとつになっていると思います。

 そしてこの時期、『ルパン三世』のTVシリーズは長い休眠期に入りますが、1989年以降、約1年おきにテレビスペシャルが放送されるようになりました。この1年に1度の放送が『ルパン三世』の新しいスタンダードになっていきます。この時の小林さんは56歳になっていました。

 しかし、この期間に他のレギュラー陣は次々と交代し、第1作から残ったのは小林さんだけとなります。この同時期、初のスピンオフ作品となる『LUPIN the Third -峰不二子という女-』が2012年に放送開始。さらに第4作は2015年、第5作は2018年に放送されました。

 そして、不二子・銭形・五ェ門の声優が変更されて10年になる2021年に放送開始した第6作『ルパン三世 PART6』第0話となる「EPISODE 0 ―時代―」の出演を最後に、小林さんは長年演じてきた次元と別れることになります。

 勇退にあたって小林さんは、後任の大塚明夫さんと視聴者にメッセージを残しました。一部抜粋になりますが、「我儘を言えば90歳までやっていたかったが残念」と残しています。偶然とは思いますが小林さんは89歳で亡くなられました。つまり、もし望んで続けていてもその願いはかなわなかったかもしれません。

 この自分の死期を悟ったかのように後進へ道を譲る引き際の良さに、筆者は小林さんの中に次元のようなダンディズムを感じずにはいられません。あらためて小林清志さんのご冥福をお祈り申し上げます。

(加々美利治)

【画像】声も生き方も乗り移った? 小林清志さんが担当したキャラや作品たち(6枚)

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