『ONE PIECE FILM RED』コインの表裏? ルフィとウタの人生 シャンクスとの関係の明暗
2022年8月6日公開に公開された『ONE PIECE FILM RED』は、シャンクスの娘・ウタによる、壮大なライブから始まります。華やかな物語のスタートとは裏腹に、ストーリーでは海賊時代の闇、ウタの悲しい過去が描かれます。シャンクスという人物を中心としたウタとルフィの物語は、まるでコインの表と裏のようでした。
海賊時代の光と闇を表現するような、ウタとルフィの物語

2022年8月6日に公開された『ONE PIECE FILM RED』が大ヒットを飛ばしています。シャンクスの娘・ウタという非常にセンセーショナルなキャラクターと彼女の歌声は、まさに劇場版『ONE PIECE』の新時代を感じさせるものでした。その一方、今作で描かれたウタの過去は、かつての作品のなかでもかなり悲しいものです。シャンクスという人物を中心に置いた彼女の人生は、ルフィと非常に対照的なものでした。
※なお、筆者はTVアニメ『ONE PIECE』で放送された、映画連動エピソードを視聴していません。あくまで映画でのウタを軸に、彼女やルフィに対する思いをつづりました。ここから先は映画のネタバレに触れるので、ご了承の上お読みください。
ウタは偶然、生まれてまもなくシャンクス率いる赤髪海賊団に拾われ、幼少期を彼らの船で過ごすこととなります。少女にとって、冒険にあふれた世界はどれほど刺激に満ちていたことでしょうか。フーシャ村でルフィと話すときの彼女は、まさに「海賊として一歩先を行くお姉さん」でした。
そんな彼女の人生は、シャンクスたちと訪れた音楽の都・エレジアで一変します。偶然にもウタの「ウタウタの実」の能力で覚醒した悪魔、トットムジカによって、エレジアは無残な姿に。その罪をかぶったシャンクスは、海賊という生き方でウタの才能をつぶさぬよう、彼女をエレジアに残しました。
家族に置き去りにされ、島でひとりだけ生き残ったゴードンと生きることとなったウタ。目の前に広がっていた世界が急に閉ざされてしまった彼女の絶望は、想像を絶するものだったでしょう。世界との唯一の接点は、電伝虫でつながる島の外の人々です。しかも、彼らから聞こえるのは、海賊の略奪による悲しみと怒りでした。
当時のシャンクスはその親心ゆえに、こうした海賊の影の部分を見せたくない思いで、彼女を島に残したのかもしれません。しかし、彼女は力なき人々の声を聴き、彼らをなんとか助けたいと願い、自分の命と引き換えにした決断を下します……。
その一方、ルフィはシャンクスに命を救われ海の魅力と恐ろしさを理解しつつ、それでも海賊王への道を歩むと高らかに叫びます。そして、小さな村を出た少年は、自分の足で多くの冒険と死闘を繰り広げ、仲間を集め、挫折し、立ち上がり、次世代を担う新たな皇帝へと駆け上がるのです。
シャンクスはルフィを守るべき存在ではなく、自分と並び立つ存在、あるいは自分を超える存在として見ていました。そして彼は『ONE PIECE FILM RED』の終盤、辛い道を選んでしまった「家族」を助けるため、ついにルフィとともに奮闘します。
ルフィとは真逆のような人生を歩んだウタの鮮烈な物語は、作中の楽曲によって一層観客の心を打ちます。この思いを胸にいだきながら、筆者は二度目の映画鑑賞に向かう予定です。
(サトートモロー)