『FILM RED』で見えた、ルフィの「心の成長」 力を振るう理由もより明確に
2022年8月6日公開に公開された『ONE PIECE FILM RED』。過去の劇場版作品とは一線を画す演出や物語への挑戦は、興奮・歓喜・感動・戸惑いと、観客にさまざまな感想を抱かせています。そんな本作のストーリーで特に印象深かったのは、ウタ、シャンクスとの交流で見せた、ルフィの優しさ、強さ、そして成長でした。
静かな演出で描かれる優しさと、鳥肌必至のクライマックス
2022年8月6日に公開された『ONE PIECE FILM RED』は、シャンクスが劇場版に登場し、シャンクスの娘・ウタが中心人物として活躍、彼女の歌声を歌手のAdoさんが演じるなど、大きな注目を集めています。同作の過去作とは一線を画す演出やストーリーは、多くの感動や興奮、そしていくばくかの戸惑いをもたらしたと思います。
それでも、物語の各シーンを思い起こすたびに、『ONE PIECE』はルフィの物語なのだと再確認させられました。前作の劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』では、彼の物語は大興奮のバトルによって表現され、強く成長したルフィがありありと描かれました。『ONE PIECE FILM RED』は、もっと静かな演出で、彼本来の優しさや強さが描かれていた気がします。
ルフィは10数年ぶりにウタと再会しますが、彼女はあれだけ慕っていたシャンクスを嫌い、海賊を嫌っていました。戸惑うルフィに対して、ウタは攻撃を仕掛けます。彼女の能力でピンチに陥るシーンがたくさんあっても、シャンクスから託された麦わら帽子が破れかけても、彼はウタに本気の攻撃を繰り出しませんでした。
彼の戸惑うシーンは、一見情けなく見えてしまいます。しかし、この姿こそ、長年見せ続けたルフィの心の強さなのだとも思いました。ジャヤでベラミーに、海賊王の夢を笑われた時、ウォーターセブンでロビンが一味から抜けようとした時。理由のないケンカで、彼は拳を出そうとはしませんでした。
そんなルフィの優しさは、時にはピンチを招くこともありました。しかし、(作中の時間軸で)5人目の皇帝と注目されるようになった彼は、物語のクライマックスでその力を存分に発揮します。力をふるう理由は、ウタという「家族」を守るためです。
しかも、シャンクスとの共闘という展開が、彼がここまで登りつめてきたことをありありと物語ってくれます。演出の素晴らしさはもちろん、25年前にはじめてマンガ第1話を読んだ日を思い出して、感無量な思いでした。
ちなみに、物語のラストでシャンクスは、ルフィたちに会うことなく立ち去ります。頂上戦争で、シャンクスは瀕死のルフィと会うことなく彼を見送りました。今回は、ルフィがシャンクスを見送るという、真逆のような展開だったことが印象的です。
シャンクスがルフィに送った言葉が、そのまま頭に浮かび、またしても胸にくるものがありました。
「勝利も敗北も知り 逃げ回って涙を流して 男は一人前になる
泣いたっていいんだ……!! 乗り越えろ!!!」
(サトートモロー)