東京藝大卒の漫画家が手がける超絶エンタメ作品 『チェンソーマン』に影響を与えた?
東京藝術大学は日本で唯一の国立総合芸術大学です。そんなアート界を牽引する藝大出身の漫画家は、一体どんな作品を手がけているのでしょうか?
デビューしてから入学した例も?
日本唯一の国立の芸術系大学、それが東京藝術大学です。美術を志すものならば、誰もが一度は憧れるアートの総本山。難関試験を突破した才気溢れる若者たちが集う藝大ですが、一説では「卒業生の半分は行方不明」などとも言われております。その真偽はさておいても実際、卒業後の進路は多種多様です。そのなかでも最近、漫画家として活躍する方が増えています。藝大出身の漫画家と聞くと、難解でハイコンテクストな作品を描きそうに思えますが、これがまた素晴らしくわかりやすいエンタメ作品ばかりなのです。
代表例のひとつが『ブルーピリオド』(著:山口つばさ)。『月刊アフタヌーン』で連載中の本作は、まさしく「藝大受験」を描いた青春物語です。アニメ化、舞台化もされ話題を呼びました。山口先生自身の受験体験を元に描いているだけあって、そのリアリティは抜群。センスの一発勝負に思われがちな藝大受験の意外な傾向と対策、それでも立ちふさがる才能の壁……誰もが感情移入できる構成に、美しい絵柄と、さまざまな魅力的な要素で一気読み必至の素晴らしいエンタメ作品なのです。なお山口先生がマンガを本格的に描き出したのは在学中のことで、卒業制作もマンガでした。まさに藝大で育まれた漫画家と言えます。
アニメも話題を呼んだ『ドロヘドロ』の林田球先生もまた、藝大出身です。絵画科油画専攻を卒業しています。同作は爬虫類に姿を変えられた男が、自分の記憶を取り戻しに行くダークファンタジーで、『チェンソーマン』の藤本タツキ先生が直球で影響を受けた作品としても知られています。登場人物の多くは不気味な覆面を被っており、グロテスクな描写も多々。香港の路地にデスメタル世界観をミックスしたような背景は、実にエキセントリックです。とはいえストーリー自体は王道バトル展開を見せることも多く、キャラクターたちのテンションも愛おしく、餃子も美味しそうで心躍ります。絵の情報量とのバランスも見事な、極上エンタメなのです。ちなみに林田先生は東京都立芸術高等学校の出身で、まさに美術の申し子。そんな先生が選んだ道が漫画家というのも、また素敵です。
その他、山科ティナ先生はTwitterで人気に火がついた藝大出身の漫画家です。アメリカの出身で中国育ち、16歳の時に『別冊マーガレット』でデビュー。そして、多摩美術大学での仮面浪人を経て、東京藝術大学にデザイン科に進学します。漫画家デビューしてから藝大入学という驚きの経歴です。
SNSに胸キュン系のシチュエーションラブコメを投稿し続けている山科先生作品のなかでも、A~Zカップの女性が主人公の「アルファベット乳」シリーズは大反響で、のちに書籍化もされます。柔らかなタッチとスタイリッシュな構図、そして切ない表情が毎回、読者の胸をしめつける作品です。現在も雑誌連載やテレビ番組でのイラスト提供など、活躍の場を広げています。
東京藝術大学は、芸術家を育てる大学です。今や当然のごとく、「マンガ」もその芸術に含まれています。今回ご紹介した先生たちはもちろんのこと、藝大出身でなかろうと漫画家の先生たちは紛れもなくアーティストと言えるでしょう。
(片野)