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異業種を経験した漫画家3選 警官の日常のリアルさ、コロナまで描くこだわりに驚愕

マンガは基本的にフィクションの世界ですが、描写がリアルであればあるほど、面白さも増すものです。今回は、異色の経歴を持ち、作品へと生かしている作者の方々を紹介します。自衛隊勤務や警察官、大手企業の会社員など、知っているようで意外と知らない世界が見られますよ。

川合=泰三子先生?

リアル過ぎて誰も見たことがない、警察官の日常を描いた「お仕事マンガ」『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』第1巻(講談社)
リアル過ぎて誰も見たことがない、警察官の日常を描いた「お仕事マンガ」『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』第1巻(講談社)

「学生の頃から持ち込みをしていた」「デザイナーやイラストレーターから漫画家になった」など、漫画家になった方々の経歴はさまざまです。そのなかには、異業種から一念発起して漫画家になった先生も少なくありません。

●元自衛官、格闘技経験も豊富な漫画家!板垣恵介先生

 高校生にして秘密裏に行われている地下格闘技のチャンピオンである主人公・範馬刃牙と地上最強の生物として恐れられている父・範馬勇次郎との最強の親子喧嘩を中心に、強さを追い求める男たちのドラマを描いた格闘マンガ「刃牙」シリーズ。その作者である板垣恵介先生は、もともと陸上自衛隊に入隊し、約5年間にわたって勤務した後に漫画家になったという異色の経歴を持っています。

 TV番組『激レアさんを連れてきた』に出演時、板垣先生は自衛隊で上官から素質を見抜かれ、空挺部隊に入るよう勧められたと話していました。空挺部隊は陸上自衛隊でも最精鋭が集まるエリート部隊で、その過酷な訓練を板垣先生は自伝マンガ『我が青春の習志野第一空挺段』で描いており、「週刊少年チャンピオン」2022年40号で第3弾が発表されています。同作によると、板垣先生は食料や防寒具などを詰めた14kgものリュックや機関銃を持ったまま、3日間歩く訓練を行なっていたとのこと。過酷すぎます。ちなみに「刃牙」シリーズにも自衛隊や米軍がたびたび登場しますが、特に『グラップラー刃牙』の刃牙vsガイア(ノムラ)率いる第1空挺団精鋭部隊5名とのバトルは、板垣先生だからこそ描けた名エピソードと言えるでしょう。

 さらに板垣先生は、高校時代に少林寺拳法に励み、二段位まで取得、自衛官時代も空挺部隊にボクシング部があると知ってオリンピック代表の実力を持った選手に勝利するなど、格闘に関する才能も磨いていきました。最強を目指しすべてをかけるさまざまなキャラたちの強烈な姿は、板垣先生の過酷な状況に身を置いてでも強くなろうとする思いから生まれたのかもしれません。

●元警察官の描く、リアル過ぎる毎日!泰三子先生

 安定しているという理由で、大義もなく警察になった新人巡査・川合麻依と、麻依のもとに新たな指導員としてやってきた元刑事課のエース・藤聖子を中心に、警察官たちのリアルな日常を描いたマンガ『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』は、実写ドラマ、アニメのヒットも記憶に新しい人気作です。作者の泰三子さんは、10年間県警に勤めていた元婦警という経歴を持っています。

 泰先生はインタビューでマンガを描こうと思ったきっかけは、警察の広報の仕事だったと発言しています。地域の人たちに配っていた防犯チラシでは啓蒙活動限界があると感じた結果、「マンガ」であれば伝わるのではないかと考えたのです。絵の能力が警官としての仕事に活きるという経験は、主人公・川合が似顔絵の才能を見出される展開にも重なります。

 また、泰先生はかつて「警察官になりたいけれど、親に『立派な人がやる仕事』と言われてあきらめた」という男子高校生と出会い、「警察にいるのは君が思っているよりもっとしょうもない人たち」と彼にうまく伝えられなかったという経験があり、その際にもっとリアルな実情を教えたいと思ったことも漫画家への道に繋がったようです。

 作中では交通の取り締まりや青少年の補導、深夜のパトロールや被疑者の取り調べなど、さまざまな警察官の地道な仕事が描かれているほか、プライベートの警官たちのゆるいやり取りにもクスリとさせられます。ときにボヤきながら、ときに辛い事件に遭遇しながらも前を向いて働く警官の日々は、泰先生が経験したことと考えると見方が変わりそうですね。

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