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【シャーマンキング30周年への情熱(73)】2大ラスボスの「ハオとヤービス」 正反対の思想が対立招く?

ハオとフラ・ヤービスとの「対立の根深さ」が露見?

リリララが麻倉葉たちに、かつてパッチ族だったハオの行いを伝える、「SHAMAN KING KC完結版」10巻(講談社)
リリララが麻倉葉たちに、かつてパッチ族だったハオの行いを伝える、「SHAMAN KING KC完結版」10巻(講談社)

 またハオは、セノミアの戦士を殺す際にパッチ族の秘宝「スピリット・オブ・ファイア」(S・O・F)を使っています。ハオはこれを手に入れるためにパッチ族に転生していたと描かれていましたが、最新話によれば、ハオがS・O・Fを盗み出していることをパッチたちが知ったのは、フラ・ヤービスがシャーマンキングとして誕生する直前、ムー大陸で全てが終わった時のことでした。となるとそれ以前のハオはS・O・Fを密かに持ち出して使っては戻し……を繰り返し、自分にとっての有益性を確かめ、強奪する時期をうかがっていたのだろうと思います。抜け目がありません。

 それにしても、このハオの一件以来、パッチ族はかなり慎重になったようです。大抵のことはグレート・スピリッツの意志だからと受け入れる彼らですが、十祭司が担当シャーマンにどう接するのかはゴルドバたちに筒抜けだったようで、身内への監視体制が強化されています。

 またS・O・Fが盗まれて以来、残りの四大精霊は地獄の奥深くに封印されました。いずれもハオのことがなければ、そうなっていなかったでしょう。ただ『SUPER STAR』の時代、すでにパッチ族は滅んだとされているので、真偽を確かめることは難しいかもしれません。

 さて話は変わりますが、今回もうひとつ、先代シャーマンキングであるフラ・ヤービスとハオの対立の根深さが浮き彫りになりました。ヤービスは、ちょうど時代が武力支配から政治と金が支配するものへと移り変わるのを利用し、そこに強力な階級社会を作ろうとしました。多数の弱者を支配することで一部の強者が楽をする社会です。

 ところがハオは、シャーマン以外の人間は全員殺すというのが基本です。殺すといってもそれは、「凡人はグレート・スピリッツに還(かえ)った方が幸せに暮らせる」という意味です。ですから世界に必要としている人間の数も、人間に対する愛情も、ハオとヤービスは正反対なのです。

 そしてハオがシャーマンキングになった後もヤービスの作った世界が変わらない。確かにハオは人間の抹殺を思い留まりましたが、それでも変わらなさすぎる。それはなぜなのか? もしかしたら何かこのあたりに、物語を読み解くヒントがあるのではないか……筆者はそう思うのでした。

 この他にも最新話には衝撃の展開が描かれているので、ぜひご覧になってください。それでは今回はこの辺で! 次回もよろしくお願いします!

(タシロハヤト)

【画像】新たなラスボス「ヤービス」はどれだけヤバいのか? 「シャーマンキング」の重要エピソード(4枚)

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k