アニメはまだか? 未映像化の「次にくるマンガ大賞」殿堂入り作品たち
我が道を行くWebマンガ部門、しかし王道はやはり人気?

また、世評も高く、筆者も個人的に面白いと思っているのが2019年の1位『薬屋のひとりごと』(原作:日向夏、作画:ねこクラゲ、構成:七緒一綺)です。原作は「小説家になろう」発でありながら、いわゆる「なろう系」のテンプレである異世界転生もチート能力も出てきません。主人公が薬師としての知識を駆使して事件を解決する異色で意欲的な作品で、中華風の世界観のファンタジーながら、医療ミステリーのようなテイストもあります。
過去に医療ミステリーマンガがアニメ化された例は多くないですが、『インハンド』(作:朱戸アオ)、『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』(原作:草水敏・漫画:恵三朗)などが実写化されており、ありえないということはないでしょう。「アニメ化して欲しい作品」としてたびたびネットでも名前があがっていることから、こちらも「次に来る」可能性は高いと思います。
●Webマンガ部門の傾向
続いて、Webマンガ部門の過去受賞作を見てみましょう。
Webマンガ部門はエッセイや日常モノ、恋愛モノなど現実的な作品が多い印象です。代表的なところだと第1回の2位を獲得した『ウッドブック』(作:鴻池剛)、第2回の2位『腐女子のつづ井さん』(作:つづ井)はエッセイマンガで双方とも未映像化です。ちなみに、アニメ・実写になった第1回の1位獲得作『ヲタクに恋は難しい』(作:ふじた)はヲタクの日常を絡めた恋愛コメディであり、以降の受賞作の傾向に近い、いかにもWebマンガ部門らしい作品でした。
最新(2022年)1位の『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』(作:地主)も、タイトルそのままの日常ものです。こういった作品が多くランクインするのは、コミックス部門にはあまり見られないWebマンガ部門特有の傾向です。
逆にバトルもあるフィクション度の高い作品はWebマンガ部門では少ないのですが、『SPY×FAMILY』(作:遠藤達哉 2019年の1位)や、『怪獣8号』(作:松本直也 2021年の1位)など映像化される確率は高いです。やはり王道ジャンルが強いのは変わりません。
「少年ジャンプ+」がサービスを開始したのが2014年9月、そして同年の10月に「次にくるマンガ大賞」が創設されています。「ジャンプ+」オリジナル作品がトップ3に初めて入ったのは第3回(2017年)ですが、翌年はトップ3内作品ゼロでした。ところが2019年に『SPY×FAMILY』が1位を獲得すると、以降は4年連続でトップ3に作品を送り出しており、特に21年、22年は連続で2作品がランクインしています。4年間(2019~2022)のWebコミック部門トップ3獲得作品12作品中、なんと半分の6作品が「ジャンプ+」オリジナルです。
そして、「ジャンプ+」作品のなかで世評からも「次に来そう」なのが、2021年に2位を獲得した『ダンダダン』(作:龍幸伸)です。看板作品として地位を確立している『ダンダダン』は、SFとオカルトとバトルと青春ラブコメが融合したジャンル分け不可能な怪作で、Webマンガ部門に多い日常もの受賞作とは真逆の、バリバリのフィクション。『怪獣8号』のアニメ化が待機中の今、『ダンダダン』のアニメ化はもはや順番待ちと言ってもいいのではないでしょうか。
もちろん、「次にくるマンガ大賞」殿堂入り作以外にも人気マンガは多数あり、競争は激しいのが現状です。今回取り上げた作品たちが、いずれアニメ化されるのを気長に待ちたいと思います。
(ニコ・トスカーニ)
※本文の一部を修正しました。(2022年9月30日 23:50)