絶えない『ジョジョ』の「何部から読むべき」論争 全部面白いのに…ファンのジレンマ
『ジョジョの奇妙な冒険』は何部から読むべきか? 長年決着の出ない論争です。こんな議論が巻き起こる理由には、『ジョジョ』ファンならではの複雑なジレンマがあるのです。
全部読んで欲しいからこそのジレンマ
マンガは何巻から読むべきでしょうか? もちろん、第1巻から読むべきかと思います。ところが稀代の大河浪漫マンガ『ジョジョの不思議な冒険』(著:荒木飛呂彦)においては……どうにもその限りではないようなのです。
『ジョジョ』では長らくの間、「初心者には何部からおすすめすればいいのか?」という議論が盛んに行われてきました。いったい、なぜそんな議論が巻き起こるのでしょうか? ネットの声を見てみると、そこには『ジョジョ』ファンだからこそのジレンマが潜んでいるようです。
『ジョジョ』という作品は「部」構成です。部ごとに主人公や舞台が変わり、現在、第8部『ジョジョリオン』までが完結しています。1986年の連載開始以来、画風やキャラクターのテンションもどんどん変化してきました。
もちろんどの部も面白いのですが、『ジョジョ』の代名詞ともいえる「スタンド」によるバトルが導入されるのは第3部。読んでいない人でも知っていそうな有名キャラ・空条承太郎が主人公の時からです。それ以前の第1部と第2部は、「波紋」を使ったバトルがメインでした。さらに、第7部以降でまた大きく世界観が刷新され……どうやらこの特異な構成も、また「ジレンマ」を生んでいるようです。
「結局、ジョジョって何部からおすすめするのがいいの?」
「友人にジョジョ何部から読めば良いかと訊かれて途方に暮れている」
といった声は、今もSNS上でたくさん見受けられます。もちろん、ファンからすれば第1巻から全巻読んでほしいという気持ちは山々でしょう。理由は「面白いから」に他なりません。ジョナサンやジョセフの「波紋」バトルがあってこその「スタンド」ですし、ディオ・ブランドーとジョースター家の第1部からの因縁を把握しておいた方が、その後も絶対に楽しめます。とはいえ、初心者の多くはもしかしたらスタンドバトルを期待しているかもしれない、もし第1部から読んで「思ってたのと違った」となったら寂しい、だからこそすすめ方に迷う……このジレンマです。
なお、この問題は「すすめる側」が勝手に悩んでいるだけ、というわけでもないようです。アニメも話題で『ジョジョ』の認知度がさらに高まった昨今は、SNSで同様に「何部から読めば(見れば)良いのか」と迷っている方も一定数います。
まさに『ジョジョ』ならではの現象ですが、一方で「何部から読むか迷える」というのは、リアルタイムで連載を追ってきた世代にはできなかったことです。すすめる側はこれからも大いに迷うことでしょう。しかし、今から読もうとしていらっしゃる方はシンプルに「何部から読んでも良い」という状態。調べてみると、意外とすすめてくれた人の意見や本人のパッと見の興味から4~5部から、現在のアニメに合わせて6部から『ジョジョ』に入門したという人もいるようです。主人公たちをざっと眺め、ピンときた部から読み始める、それが最も『ジョジョ』精神と呼応した読み方かもしれません。
(片野)