『ドラクエIII』のアッサラームで「大人の世界」を知った少年たち 踊り子さんの姿を妄想して…
『ドラクエIII』で初めて「昼」と「夜」の時間が設定されました。このおかげで町もまた夜にしか見せない顔を持つようになったのです……あの高揚感をプレイバックします。
ドラクエが教えてくれた「夜」=「大人の世界」
小学生が夜の町に繰り出すには、「ドラクエ」をプレイするよりほかありませんでした。
国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズでは『ドラクエIII』より昼と夜の時間区分が導入されました。フィールド上で昼から夕方、そして夜へとグラフィックが移る瞬間は「冒険している」実感を強化してくれるものでした。
さてなかでもテンションが上がったのが「夜の町」。この昼と夜システムが導入されてから町も「昼の顔」と「夜の顔」を持つようになったのです。といっても大抵の村や町はみんな眠っており、開いているのは宿屋くらいなものでした(それでも夜の町を歩くこと自体、背徳的で高揚しました)。
ところが、いくつかの町では「昼」と「夜」では全く別の顔を見せてくれたのです。『ドラクエIII』で最高にワクワクした「夜の町」をご紹介します。
まずはなんといっても「アッサラーム」です。現実でいえば中東地域に位置するこの町、昼は商人たちが集う貿易町です。さてやはり気になるのが「ベリーダンス劇場」の存在です。支配人らしき男に話しかけると「この劇場は夜から」と言われ、適当に外をうろついて夜になって戻ってくると……大人の世界でした。別にグラフィック的には劇的な躍動はないのです。ないのですが、想像補完というのはすごいもので、あの時、少年たちの目には確かに踊り子さんたちの光る汗まで見えていたのです。
さらにいえば『ドラクエIII』のハイライトシーンといっても過言ではない「ぱふぱふ」小屋。正直、勇者は何を期待して女性に導かれ、そして「ぱふぱふ」なるものが何を意味するかも知らない状態だった人も多いはず。ただ「大人の体験をした」という漠然とした昂りだけが夜に溶けいきました。
「使えない呪文」の力で…見てはいけないものを発見!
『ドラクエIII』屈指のホラー町「テドン」。むしろ「夜の顔」しかない不気味な村でした。船に乗って向かうと近くのどの町からもちょうど「夜」になるように位置づけされているらしいこの村。夜のテドンは活気に溢れ、まるで昼間のよう。ところが宿屋で休んで目をさますと……そこはしかばねの転がる廃墟の村に様変わり。どうやらすでにバラモス軍によって滅ぼされていた幽霊村だったのです。夜に待っているのは「歓楽」だけではありません。「ホラー」もきっちり抑えてくるあたりが見事で、ちびらざるを得ないのです。
村や町は夜になっても往来が可能ですが、お城は夜になると閉門されてしまい見張り番に追い返されてしまいます。それでもどうしても夜のお城に侵入したい、こっそり玉座に座ってやりたい。そんなときに役立つのが、レムオルです。そう、エジンベアの門番の目を盗む以外に用途がなかったあの呪文です。ではどこで役立つかと言えば結局エジンベアです。とにかく夜の城内へと侵入してみると……なんと大臣が玉座にこっそり腰掛けているではありませんか。考えていることは誰でもおんなじです。人間の秘密もまた夜に出現するのです。
さて年齢を重ね、実際に「夜の町」に出歩けるようになった今でも、あの画面に確かにあった「夜」が懐かしくなる時があります。
(片野)