受注生産で「転売」は撲滅できる? 効果はアリ、でも「決め手」に欠けるワケ
本来必要のない中間搾取が生まれる「転売問題」。昔から今も変わらず行われており、対策を打ち出すもいたちごっこに陥ることも少なくありません。こうした状況のなか、先日行われた人気同人誌の受注生産が、転売価格に一定の効果を及ぼしました。
ガンプラ、PS5、ブランドの限定品……有効な対処法が未だ見つからない転売問題
人気が高くて手に入らないけど、どうしても欲しい……そんな気持ちに付け込み、上乗せした価格での販売を狙って商品を仕入れ、販売する。一般的に「転売」と呼ばれるこうした行為は、大きな問題として広く捉えられています。
ですが、イベントのチケットなど禁止されたものを除き、多くの商品は直接的には制限されていません。そのため法律上では問題がなく、グレーゾーンな扱いというのが現状です。
「転売」と「不用品の処分」の明確な区別を客観的にしづらいのも、線引きを難しくしている要因のひとつ。「自分用に買ったけど、急な出費でピンチなので売ります」と言われた場合、それが本当かウソか、受け手側は判断できません。
転売問題は小売店側も考慮しており、さまざまな施策で対応しています。果たしてどんな対処が行われたのか。また、成果はあったのか。転売の対象になりやすい人気商品を例に、振り返ります。
●転売への対応策はさまざま、しかしいたちごっこの側面も
転売行為そのものは昔から行われてきましたが、PCにスマホといった端末と、インターネット普及により、個人の売買も距離を問わず行えるようになりました。そのため、転売行為は以前よりも可視化され、また勢いも加速する一方です。
2020年の発売以来、未だに入手難が続く「PlayStation 5」は、長らく転売の的になっています。今もフリマアプリを覗けば、メーカー希望小売価格に数万円ほど上乗せされた金額がズラリ。「新品」「未使用」の文字も並んでおり、すべてが不用品の処分とは到底思えません。
高額転売は消費者の購入意欲に悪影響をもたらすため、小売店側も対応に追われています。例えば、転売撲滅宣言を打ち出している「ノジマ」は、以前行ったPS5の抽選販売に寄せられた約12万件の応募について、1件ずつ目視による最終確認を実施。転売目的での購入希望者かどうかを精査する対応を報告し、当時話題となりました。
このほかにも、PS5の外箱に開封済みのシールを貼る、内容物を覆う梱包材に×印を入れる、クレジット機能のある会員カードを持つ方にのみ販売するなど、店舗によってさまざまな施策が行われています。
また、こちらも転売問題が根深い「ガンダム」のプラモデル、通称「ガンプラ」を販売する際、そのプラモデルのキット名(モビルスーツ名)を読めない方には売らない、といった対策が講じられたケースもありました。
モビルスーツの名前は、プラモデルを買うほどのファンなら誰でも答えられますが、作品を知らないと全く読めない名前も多数。そのため、転売しか頭にない購買者を炙り出すのに成功しました。
しかし、こうした転売対策が功を奏したかと言えば、PS5は前述の通りフリマアプリの定番商品として並んでいます。またガンプラの件も、関連情報を事前にチェックし、対処される恐れがあります。幅広く使える効果的な転売対策となると、なかなか答えが出ないのが現状です。
転売を懸念する小売店は、転売対応に追われると同時に、対策に向けた予算も割く必要があります。余計な問題が増え、費用もかかるとあっては、小売店にとってデメリットばかり。到底、受け入れられるものではありません。