初代ガンダム「目」のデザインはタレ目? つり目? 時代ごとに微妙に違うワケ
時代の変遷とともにデザインも変ってきた歴代ガンダム。でも初代ガンダムだけでも、今と昔でこんな違いがあったとは?
時代に合わせた「目」のデザイン
TVシリーズだけでもすでに20作品を越える「ガンダム」シリーズは、1979年の『機動戦士ガンダム』から、数多くのファンに支えられ、40年にもわたり作り続けられてきました。その間、数え切れないほどのモビルスーツ、そして主役たるガンダムそのものも、時代に合わせてデザインされています。しかし、それら全てのデザインに、なんらかの形で継承されているのは、後に「RX-78」と呼ばれるようになった、大河原邦男さんデザインの初代ガンダムです。
ガンダムデザインの代表的な意匠は、白いボディーカラーのほかに、額からV型に延びるアンテナ、口元を覆ったマスクなどの「頭と顔」の部分で、後のガンダムのほとんどもこれに準じた頭部デザインになっています。ところが『機動戦士ガンダム』の次に作られた「ガンダム」シリーズである『機動戦士Ζガンダム』の時点で、すでにこのイメージを変えている部分があります。それが「目」です。
ガンダム達の目には『SDガンダム』などの一部を除けば瞳がなく、機械であるロボットらしく感情を感じさせない目になっているのですが、意識して見比べてみると、Ζガンダムは鋭い目つきの「つり目」をしています。一方、RX-78ガンダムはいわゆる「タレ目」なのです。
もちろん、作画は全てアニメーターが手で描いていた時代です。角度によって、またその時々の心情に併せたように、ガンダムの目つきもシーンによって差はあるのですが、この「タレ目」は、当時人気だった人間の頭蓋骨の眼孔を模した形のサングラス、俗に「レイバン型」などとも呼ばれる格好です。人気マンガの『ゴルゴ13』や、「坊やだからさ」のセリフで有名なシャアの私服姿の時のサングラスと言えば、多分お解りでしょう。
1970年代から人気を誇った、このレイバン型のサングラスですが、80年代のバブル期あたりから流行は変化していきます。Ζガンダムがデザインされた80年代中頃には、レイバン型は一部に根強いファンを残すものの、多くの人にとっては過去のものになっていました。
こうした時代の流れのなかで、ガンダムも若手デザイナーによって鋭い目つきの顔になっていきました。また、すでに人気だったガンプラの世界でファンを魅了していた人気モデラーの作例なども、より鋭い目つきに変化し、その後「RX-78」として描かれるガンダムやその立体物は、ほとんどが本来の「タレ目」ではなくなり、現在のような顔つきのRX-78が定着したのです。
しかし、本来の顔つきを忠実に再現した1/1等身大の初代ガンダム像が存在するのをご存じでしょうか。2003年7月から2006年8月まで、千葉県の松戸に設営されていた「バンダイミュージアム」の7階に作られた「MSM(モビルスーツミュージアム)」の1/1ガンダム胸像です。
今では、日本だけでなく中国にもあるガンダムの1/1像ですが、腰から上だけとはいえ、このガンダム像は20年も前に作られた世界初の立体等身大ガンダムです。また、当時すでにつり目型に作られることの多かったRX-78ではなく、79年の本来のガンダムをそのまま再現することを重視し、設定書どおりのタレ目ガンダムなのです。首を回し、目の色も変わるこの1/1像は、併設されていたレストランからも間近に見ることができ、その穏やかな顔つきがレストランという憩いの場にも似合うと、大変人気でした。
当時、多くのガンダムファンの聖地として人気だったこのミュージアムは、3年間の開催期間を終え、惜しまれつつ閉館しました。ですが、栃木県壬生町の、おもちゃのまち(本当の地名です)にある「バンダイミュージアム」に行けば、今でもこの1/1ガンダムに会うことが出来ます。
ミュージアムの玄関を入った正面フロアで、目の下で遊ぶ子供達を穏やかな表情で見下ろすRX-78の姿は、きっとみなさんに、戦いを離れた平和なガンダムとの時間を与えてくれることでしょう。多分、クリスマス時期には、手の上に大きなプレゼントの包みを載せていると思いますよ。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規所属にて『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
(風間洋(河原よしえ))