西島秀俊主演『仮面ライダーBLACK SUN』は賛否を呼ぶ? 現実社会を投影した特撮ドラマ
シリアスなストーリー展開で人気だった『仮面ライダーBLACK』が、西島秀俊さん、中村倫也さんを主演に迎え、『仮面ライダーBLACK SUN』としてリブートされました。豪華キャスト、過激なバイオレンス描写に加え、日本の戦後史をトレースしたような生々しい世界観が話題となっています。危険な匂いをさせる、『仮面ライダーBLACK SUN』の見どころを紹介します。
裏切りが相次ぐ、人間くさいドラマ展開

西島秀俊さん、中村倫也さんが共演した特撮ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』が、2022年10月28日よりAmazon Primeビデオにて配信されています。1話45分前後で、全10話の構成となっています。ブラックサンとシャドームーンを演じるふたりのほかに、吉田羊さん、中村梅雀さん、三浦貴大さん、尾美としのりさん、ルー大柴さんといった多彩なキャストが出演しています。
本作のオリジナル版となる『仮面ライダーBLACK』は、1987年~88年にTBS系で全51話が放映された人気ドラマでした。同じ日蝕の日に生まれ、兄弟同然に育った若者・南光太郎と秋月信彦が敵味方に分かれ、次期「創世王」の座をめぐって死闘を繰り広げるというシリアスな物語でした。
新たにリブートされた『仮面ライダーBLACK SUN』を撮ったのは、犯罪映画『孤狼の血』(2018年)などのヒット作で知られる白石和彌監督です。『孤狼の血』の振り切ったバイオレンス描写と、密約や裏切りが相次ぐ、人間くさいドラマ展開は高く評価されています。白石監督が初めて挑んだ特撮ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』も、第1話がR18指定になるなど、かなり過激な内容となっています。
アクションシーンだけでなく、現実世界を投影した世界観も話題を呼んでいます。TVでは観ることができない、危険な匂いを感じさせる『仮面ライダーBLACK SUN』の魅力を紹介します。
同い年の親友を演じる西島秀俊と中村倫也
正義のヒーローが、悪の組織と戦う。そんな特撮ヒーローものの大原則が、『仮面ライダーBLACK SUN』には存在しません。人間と怪人たちが共存する社会を舞台に、登場人物たちはお互いの利害と信条をめぐって、争うことになります。往年のヤクザ映画『仁義なき戦い』(1973年)の特撮ドラマ版のような、生々しいストーリーとなっています。
同い年の親友同士だったはずの光太郎(西島秀俊)と信彦(中村倫也)ですが、「このふたりでは年齢差があるのでは?」と誰もが疑問に感じたのではないでしょうか。『仮面ライダーBLACK SUN』では「ヘブン」と呼ばれる特殊な栄養を含んだゼリー状のものを信彦は食べ続け、若さを保っているという設定となっています。
この「ヘブン」の原材料をめぐって、人間と怪人たちとの間で争いが起きています。また、若さと活力を与える「ヘブン」ですが、原材料の秘密を知ると食べたいとは思わないでしょう。
怪人向けの栄養剤「ヘブン」をかたくなに口にしなかったために、光太郎は中年のおじさんになってしまいました。くたびれた感じを漂わせる光太郎は、今までにないライダー像です。主演映画『ドライブ・マイ・カー』(2021年)がカンヌ国際映画祭で四冠を受賞するなど、国際的な脚光を浴びる西島秀俊さんの変身シーンは、若手俳優には出せない貫禄を感じさせます。
オリジナル版で人気だった「クジラ怪人」に濱田岳さんが扮している他、白石作品の常連俳優である音尾琢真さんや、吉田羊さん、中村梅雀さんも怪人に変身します。演技派俳優たちの怪演ぶりは、特撮ドラマ史に語り継がれるのではないでしょうか。