『チェンソーマン』はED曲が「もう1つの本番」 ミュージシャンも「デンジの乳揉みたい夢と同じ」
アニメファンのみならず音楽ファンからも熱い視線を集める TVアニメ『チェンソーマン』。週替わりで12曲という贅沢なエンディング曲は、さながらミュージシャンバトルの様相も呈してます。
エンディング曲まで気が抜けない異例のアニメ

ハイクオリティすぎると話題のTVアニメ『チェンソーマン』は、アニメファンだけでなく音楽ファンからも熱い視線を集めています。
オープニング曲は、原作の大ファンだという米津玄師さんが担当した「KICK BACK」。共同アレンジにKing Gnuやミレニアム・パレードで活動する常田大希さんを迎えた渾身作です。米津さんがシャウトする言葉(歌詞)は、『チェンソーマン』の主人公・デンジの心の叫びに寄り添う切なさで、鳥肌ものです。
そしてエンディング曲は驚きの、12組のミュージシャンによる週替わり。エンディング映像が毎回違う作品はありましたが、映像どころか曲まで違うというのは異例中の異例です。参加ミュージシャンと曲名は発表されているものの、どの回を誰が担当するのかは放送を見るまで分かりません。通常のアニメならエピソードの終わりはひと息つく感じがするものですが、『チェンソーマン』の場合は、そこからがもうひとつの本番で、目も耳も釘付けにさせられてしまうのです。放送された第4話までのエンディング曲を見てみると……。
第1話では、主人公のデンジが「チェンソーの悪魔」ポチタと契約してチェンソーマンとなるまでが描かれました。エンディング曲はVaundyさんの「CHAINSAW BLOOD」。デンジとポチタの絆であるエンジン音から始まるこの曲は、どこか懐かしさを覚えるハードロックです。映像は映画のエンドロールのように文字だけが流れる黒バックですが、エンジン音をイメージしたであろうギターリフに、血まみれで戦うチェンソーマンの姿が見えるようでした。
Vaundyさんは「何度も原作を読み返し、そのなかで得た『チェンソーマン』の味を噛み、飲み込み、僕なりにこの作品にふさわしいと思える音楽を吐き出せた」と語っています。またSNSでは「チェンソーマンのために書いたチェンソーマンのためだけの曲です。精一杯の愛です」とも。その愛、確かに伝わりました。
公安対魔特異4課でともにデビルハンターとして働くことになるデンジ、早川アキ、「血の魔人」であるパワーが集結する第2話エンディング曲は、ずっと真夜中でいいのに。の「残機」でした。作詞作曲ボーカルのACAねさんは「2話コンテいただき、ここからはじまる3人の勇往邁進な舐め鎖り新生活、自分の生活と交えながら吐きながら魂込めました」とコメントしています。エピソードに続く曲がピッタリだと思えるのは、その物語を消化し尽くしているからなのでしょう。
第3話ではデンジがパワーの(胸をもむ)ために、強大な「コウモリの悪魔」と戦うエピソードが描かれましたが、エンディング曲は、挿入歌にも使われているマキシマム ザ ホルモンの「刃渡り2億センチ」でした。低いベース音、デスボイス、女声からのメロディアスな歌い上げと、悪魔世界の混沌が詰まったホルモンらしい一曲。作詞作曲のマキシマムザ亮君のコメントは「チェンソーマンのアニメに曲が使われるのはずっと夢だったので、デンジの乳揉みたい夢と同じ」でした。
パワーちゃんが、デンジ、早川アキと共同生活することになった第4話のエンディング曲は、以前から作者・藤本タツキ先生の影響を受けてきたというTOOBOEの「錠剤」。魔人ゆえに人間の常識とはかけ離れた行動をとるけれど、なぜか憎めないパワーちゃんの狂気とかわいらしさが同居したポップな1曲です。けれども端々に、魔人となる前のパワーちゃんの哀しみも感じられました。
TOOBOEは第4話の放送後、SNSで「これからは1ファンとして楽しみますわ~」とつぶやきましたが、確かにファンにとっては楽しみな週替わりのエンディング曲も、参加ミュージシャンにとっては渾身のエンディング曲バトル。担当回が終わるまでのプレッシャーは相当なものに違いありません。
この先、女王蜂、TK from凜として時雨、Aimer……など、そうそうたるミュージシャンたちが、どの回にどんな曲で登場するのか、期待で胸がふくらみます。
(古屋啓子)