初期の勢い失った『ウマ娘』の現在 決算資料から見える「新たな段階」とは
アプリゲームとしてはもともと「不利な条件」

しかしながら昨年2021年の秋ごろには、初期の勢いはなくなっていたことも明らかでした。リリース開始直後は毎月のように売り上げ100億円超えを達成していましたが、徐々に減少し、その後は資料によって多少の差異はありますが、2022年はおおよそ月に30億円から80億円ほどの売り上げを達成しているようです。
今年10月に発表されたサイバーエージェントの2022年度通期決算では、連結売上高は7,105億円と伸びているものの、これは広告とメディア事業が順調に推移したためであり、連結営業利益については691億円と33.8%の減益になっており、その原因が2021年度のゲーム事業が好調だった反動であると書かれています。
もっとも『ウマ娘』がリリースされる前、2020年度の連結営業利益は338億円なので、『ウマ娘』の影響はまだまだ大きいと考えても良いでしょう。
どのようなアプリもそうですが、長期で継続してサービスを提供し続けるには新たなキャラクターや要素を取り入れていく必要があります。しかし『ウマ娘』は史実に登場したサラブレッドを擬人化する性質上、他のゲームアプリとのコラボは基本的にできません。
また、基本的には馬主の許可を得なければ使用できない点も問題です。キャラクターの元ネタとなっているサラブレッドの数が限られている点も、厳しい制限となっています。むしろこれらの不利を抱えながら2年近く数十億円単位の売り上げを出し続けていることは、『ウマ娘』というコンテンツが持つ底堅さを示しているように思えます。
コミカライズ展開も、オグリキャップを主人公とした『ウマ娘 シンデレラグレイ』(マンガ:久住太陽、脚本:杉浦理史、企画構成:伊藤隼之介(企画構成)が人気を博しており、今後も新たな作品の展開が予定されています。
アニメの3期はまだ正確な放送時期が明らかになってはいませんが、2期のブルーレイ「ウマ箱2 第1コーナー トレーナーズBOX」はアプリとの連動により、初週で11万枚を売り上げる記録的快挙を成し遂げています。おそらく3期放送の際も同じような企画が行われるはずです。2期の記録に及ぶかどうかはわかりませんが、アプリがある程度の人気を維持していれば、かなりの数字が出るはずです。
そして何よりも、『ウマ娘』のキャラクターたちはネットミームとしてかなりの浸透ぶりを見せており、今でもTwitterなどでは定期的にファンアートが掲載され、高い人気を見せています。
『ウマ娘』はスタート直後のような爆発力は失われたかもしれませんが、長期的なIPとして順調に歩んでいる状況です。今後もさまざまな形で、ファンを末長く楽しませてくれるに違いありません。
(早川清一朗)