『ドラクエ』「あらくれ」は実在した? あの「角・覆面・マッチョ」ビジュアルの謎
『ドラクエ』シリーズでおなじみのモブキャラ「あらくれ」。果たして彼のような格好をした人は中世ヨーロッパに実在したのでしょうか?
「角」「覆面」「マッチョ」このイメージはどこからやってきた?
「あらくれ」。辞書的には「気性が荒く、振る舞いの乱暴な者」という意味ですが、『ドラゴンクエスト』シリーズファンからすれば牛の角がついた覆面をかぶった半裸のマッチョ男を指す言葉です。果たして、あんな姿をした人は現実に存在したのでしょうか。不思議な覆面マッチョ「あらくれ」を掘り下げます。
まず『ドラクエ』における「あらくれ」ですが、私たちが想像する姿で登場したのは『II』からのこと。とはいえ、あのデザインは徐々に完成されたわけでなく初出の『II』の時点で、角覆面、半裸という今日に見られる「あらくれ」は完成しているのです。リメイク版ではなぜかスキンヘッドに髭面に変更されました。今思えば、こちらの方が正規の「荒くれ者」感がありますが、もうあの角覆面を知ってしまったあとでは物足りなさを感じます。
さて『ドラクエ』シリーズの世界は中世ヨーロッパの世界をモデルにしています。建物や登場人物の服装などもある程度それに寄せた作りになっています。では「あらくれ」スタイルも実在していたのかといえば……さすがにいなかったようです。となると、どのようにしてあの「あらくれ」スタイルが完成していったかは想像する余地があります。
例えば中世時代、西ヨーロッパ地方に出没し悪事の限りを尽くしたバイキング。「あらくれ」にもほどがある彼らですが、なんとなく「角のついた兜」を装備しているイメージがないでしょうか(近年の研究では真実ではないという説が有力ですが)。そこからの着想は大いにありうる話です。
では「覆面」はどこからきたのでしょうか。中世ヨーロッパにおける覆面といえば「斧を持った処刑人」を思い出す方も多いでしょう。『ドラクエ』にはそれをモデルにしたような魔物が登場します。ご存知「カンダタ」や「エリミネーター」がそれです。とはいえ、この「処刑人」のイメージも後年の創作におけるイメージが強いようで、少なくとも中世における死刑執行人の一般的な服装とはかけ離れていたようです。
となると、空想上の「バイキング」と「処刑人」のイメージを足して、荒々しさだけを抽出した結果、「あらくれ」が誕生した、と見ても良いでしょう。ある意味、『ドラクエ』でもっともファンタジーな存在と言っても過言ではありません。最も単独スピンオフ作品が期待できるモブではありますが、まずは『XII』の発売を待ちましょう。
(片野)