敵ながらアッパレ!勝つために気合を見せた『ジョジョ』のキャラたち
たとえ敵であろうと魅力的なキャラが多いのが、『ジョジョの奇妙な冒険』の特徴です。なかでも今回は、思わず歴代ジョジョとその仲間が賛辞を送ってしまった、気合いの入りすぎた敵キャラを紹介します。
「脳だけ」になっても? 柱の男が最後に見せたガッツにジョセフも感動
『ジョジョの奇妙な冒険』(著:荒木飛呂彦)に登場するキャラは、敵であろうと味方であろうと、覚悟を持っています。それゆえに、主人公サイドと同じくらい、ファンの間で人気の高い敵キャラも少なくありません。今回は、魅力的な『ジョジョ』の敵のなかでも、とりわけ窮地で信じられないくらいの「気合い(ガッツ)」を見せたキャラをご紹介します。
まず、第2部に登場した柱の男・エシディシです。ジョセフとの戦闘では、左腕を切断されて激昂、かと思いきや「あァァァんまりだァァアァ」とわざと泣き叫んで、心を落ち着かせたエシディシです。クセの強い敵が多い『ジョジョ』の、序盤を彩ってくれた強敵でした。
エシディシはなかなかの知略家でしたが、ジョセフの手品的な作戦に引っかかり、敗北を喫してしまいます。しかし、エシディシはここで終わりません。なんと彼は、脳と血管だけの状態でスージーQを操り、仲間のために「エイジャの赤石」を郵送しようとします。確かに、とんでもなく卑怯です。卑怯ですが、いっさいなりふりかまわぬこの姿勢に、ジョセフも戦いの後、思わず「こいつの生命にだけは敬意を払うぜ」と賛辞を送ったのでした。
第3部では、雑魚キャラ扱いされがちな刺客・オインゴの気合いを紹介します。他人に自在に変身できるスタンド「クヌム神」で、承太郎そっくりに化けたオインゴですが、承太郎の「性格」まで真似るのは、至難の技です。
ただでさえ人並外れてクールに振舞わなくてはいけないのに、作中でオインゴは「火のついたタバコを5本、口のなかに入れた状態でジュースを飲む」という奇天烈な隠し芸まで、無茶振りされます(承太郎が普段こんなことをしていたことにも驚きですが)。そして、オインゴはバレないために、ここぞのガッツで臨むのです。もちろん、失敗しましたが。
第4部では、何ゆえのガッツかはさておき、ジャンケン小僧こと大柳賢の気合いの入り方は凄まじいものがありました。ジャンケンに勝つと、相手のスタンド能力を奪える「ボーイ・II・マン」の本体ですが、最初は本人にその自覚はなく、純粋にジャンケン勝負がしたかった少年として描かれています。
その標的となった岸辺露伴も、最初こそ侮ったり小狡い手を使ったりしますが、少年の覚悟を知ると自身の運命を賭けて真剣勝負に出ました。最終的に露伴が頭脳で勝利し、「ヘブンズ・ドアー」で「二度とジャンケンに勝てなくなる」よう、少年に書き込もうとしますが……ジャンケン小僧は「自分の精神が左右されるくらいなら死んだ方がマシ」と、トラックに飛び込み自殺を図ります。この「まるで劇画っていう根性」に露伴はいたく感動し、彼を助けるためにトラックの前に飛び出すのでした。
続く第5部はなんと言っても兄貴、プロシュートの兄貴です。部下のペッシに「実行」がいかに大切かを、自らの行動で示してくれた兄貴ですが、ブチャラティ相手に壮絶な戦いを繰り広げ、最終的に列車から叩き落とされて敗北します。
しかし、プロシュート兄貴の本領発揮はここからでした。ペッシのために瀕死の状態で列車にしがみついて、最後の最後までスタンド「ザ・グレイトフル・デッド」を解除せずに、維持し続けたのです。兄貴にもほどがありました。プロシュート兄貴の勇姿に、泣かされた読者も多いことでしょう。
今回ご紹介した敵キャラは、みんな死に物狂いでした。たとえ敵であろうと、物語上の悪であろうと、その生き様には胸をたぎらせるものがあります。目線を変えれば主人公にもなり得る、そんな敵こそ『ジョジョ』らしいのです。
(片野)