誕生50周年の『マジンガーZ』 実は日本の「産業」を変えるほどの功績があった?
「超合金」も、玩具会社のアニメ進出も『マジンガーZ』から

その高い人気ゆえ『マジンガーZ』が影響を与えて、後続作品では常識となったことは少なくありません。筆者がもっとも注目したのが、目に瞳のないマシン然とした顔でした。瞳があると人間のような表情が出てしまいます。それを省いてマシンに徹したのがマジンガーZの魅力ではないでしょうか?
この部分がそれ以前のアトムや鉄人28号などと一線を画す部分で、以降の巨大ロボットアニメのほとんどに影響を与えた部分です。これが常識化したことで、逆にエルガイムMK-IIや真ゲッターロボのように、瞳があるロボットが魅力的に見えるようになったのでしょう。
他にも、ロボットにいくつもの武器を内蔵させる、空を飛べないという弱点を克服させるために開発した「ジェットスクランダー」など作品中盤でのパワーアップ、コメディリリーフであるボスボロットの登場など、後のロボットアニメに影響を与えた部分はいくつもありました。
特にボスボロットを代表とするマスコットロボットの存在は大きなものです。70年代のロボットアニメでは不可欠な存在で、時にはやられ役、そしてギャグ担当といった箸休めとして重宝されました。『機動戦士ガンダム』のハロもこの系列だと考えると、現在でも引き継がれた伝統的な立ち位置ではないでしょうか?
こういったマジンガーZの偉業を語る時に忘れてはいけないのが、オモチャの存在です。強固なボディをモチーフにした「超合金」と、巨大な存在であることをイメージさせる「ジャンボマシンダー」、このふたつのオモチャのヒットはロボットアニメのその後だけでなく、日本のTVアニメのその後、オモチャ会社のその後にとてつもない影響を与えました。
それまでのTVアニメのスポンサーはお菓子会社が中心で、現在のようにオモチャ会社の影響力はあまり強くありません。むしろ巨大ロボは売れないと敬遠されていたそうです。そのため、『マジンガーZ』の高視聴率がわかってから、スポンサーだったポピー(現在のバンダイ)は、ようやくマジンガーZの商品を販売しました。それが超合金であり、ジャンボマシンダーです。
これらの商品はそれまでになかったコンセプトの商品で、作品の人気と合わせて大ヒットとなりました。そしてポピーの主力商品となっていきます。この大ヒットから各オモチャ会社がアニメのスポンサーに名乗り出るようになりました。
当時のスタッフからの証言によると、この時期は実写ヒーロー番組に押されてTVアニメが死滅するんじゃないか? とまで危惧されるほどスポンサー不足だったそうです。その危機を回避したのが『マジンガーZ』の大ヒットでした。
当時のポピーは『仮面ライダー』の変身ベルトで注目を集めていたバンダイの子会社でしたが、この『マジンガーZ』の大ヒットでさらなる躍進を遂げ、後に合併されるまでオモチャ会社の先頭を走る活躍を見せます。
もしも『マジンガーZ』がなかったら、現在のようにアニメ業界、玩具業界が日本の誇る産業となっていたかわかりません。そう考えると『マジンガーZ』の果たした功績が、日本にとってどれだけ大きなものだったかわかります。
もちろん、「テレビマガジン」といった児童雑誌の躍進、水木一郎さんによる主題歌、オマージュされた作品など、『マジンガーZ』が残した功績はほかにも数多くあるでしょう。まだ見たことがない若い人たちにも一度は見ていただきたい、1970年代の名作だと筆者は思います。
(加々美利治)