当時は見る手段が限られた、2002年放送の隠れた傑作アニメ 富野監督作品が「思ったのと違う」
今から20年前の2002年も、数多くのアニメが放送されファンを楽しませていました。 これまで取り上げられることが少なかった傑作として、富野由悠季監督『OVERMANキングゲイナー』、『プリンセスチュチュ』の2作をご紹介します。

今から20年前の2002年も、数多くのアニメが放送されファンを楽しませていました。これまであまり取り上げられることのなかった傑作として、富野由悠季監督が手掛けた作品や、バレエをテーマとした幻想的な作品をご紹介します。
●『OVERMANキングゲイナー』
『OVERMANキングゲイナー』は2002年9月から2003年3月までWOWOWで放送された富野由悠季監督のロボットアニメです。全26話。
地球環境が悪化した近未来、人類はドームポリスと呼ばれる都市での生活を強いられていました。しかし自然環境は徐々に回復しつつあり、抑圧的なドームポリスでの生活を嫌った民衆はより良い環境を目指し移住を図る「エクソダス」を試みるようになっていました。しかし、ドームポリスの運営により利益を得ていた行政府はエクソダスを嫌い、妨害行為を行なっていたのです。
エクソダスがらみのトラブルで両親を殺された少年・ゲイナーは自宅に引きこもり、ゲームに熱中する日々を送っていました。しかし、身に覚えのないエクソダスへの共謀罪により囚われてしまいます。地下牢へと放り込まれたゲイナーはゲインという名の青年と出会い、脱獄を図ります。首尾よく脱出したゲイナーは支配者である公爵秘蔵のロボット「オーバーマン」を起動し「キングゲイナー」と名付け、密かに計画されていたエクソダスに参加、戦いの日々へと身を投じるのでした。
本作で何よりも話題となったのが、オープニングテーマの「キングゲイナー・オーバー!」です。作詞を井荻麟(富野由悠季)、作曲・編曲を田中公平氏、歌を福山芳樹氏と当時最高のメンバーで作り上げられたアップテンポな曲は、アニメソングとして極めて高いクオリティに仕上がっています。また、キャラクターやオーバーマンがひたすらモンキーダンスを踊るなど、前衛的な演出は、当時の視聴者の度肝を抜きました。
ストーリー全体を統括するシリーズ構成は大河内一楼氏。現在『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でらつ腕を振るっていますが、『キングゲイナー』の際はまだ脚本家としてのキャリアをスタートしたばかりでした。「人間地雷」のエピソードを提案して「これは違う」とたしなめられたり、前半と後半に戦闘シーンを入れるのが基本だったため脚本の密度とスピード感が鍛えられたりしたと語っています。『キングゲイナー』は今なお、近年の作品に影響を与え続けている物語なのです。