ゲーマーを愕然とさせた「スクウェア三大悪女」 後味悪い「NTR展開」も
RPGが黄金期を迎えた頃、王道の脱却を目指す作品も複数登場しました。そのなかには、予想を超える衝撃的な女性キャラを描く作品も登場。後に「スクウェア三大悪女」と呼ばれ、今も語り継がれている面々に迫ります。
感情移入していたら「号泣必至」の悪女たち
ゲーム業界の「三大○○」と言えば、最も有名なのが「三大RPG」。人によって異論はありますが、一般的には『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』が鉄板で、そこに『ポケットモンスター』や『ペルソナ』など、さまざまな意見が飛び交っています。
ですが「三大RPG」以外にも、一部のユーザーたちが語り継ぐ「三大○○」があります。そのひとつが、「スクウェア三大悪女」──その呼称からも分かる通り、スクウェアの作品に登場する「三人の悪女」を厳選したものです。
「悪女」という言葉は、容姿の悪さや男性を堕落させるといった意味も持ちますが、インタラクティブ性が強いゲームの場合だと、「自分の気持ちや感情のままに、相手(この場合、プレイヤーである自分)を振り回す身勝手な女性」を悪女として捉える傾向にあります。
そうした視点から、長らく語り続けられている「スクウェア三大悪女」。果たしてどの作品に出た誰が、「悪女」としてプレイヤーに注視されてきたのでしょうか。その実体を分かりやすく紹介します。なお、企画の構成上シナリオのネタバレを含んでいるので、ご注意ください。
●「幼馴染の王女」というポジションから、予想外の行動を見せた「ヨヨ」
「スクウェア三大悪女」のなかでも頭ひとつ抜きん出ているのが、スーパーファミコンソフト『バハムートラグーン』に登場する「ヨヨ」です。本作はシステムの詰めが甘い部分こそありますが、共に戦うドラゴンの自由な育成や、美しく描きこまれたグラフィックなど、ゲームとして確かな出来栄えを誇っています。
ですが、ヒロイン的な存在であるヨヨのインパクトが強過ぎて、ゲーム面の評価も隠れてしまうほど。当時はRPG黄金期で、王道的な作品が主流だったこともあり、プレイヤーの想像を超えるヨヨの振る舞いが良くも悪くも記憶に刻まれました。
プレイヤーの分身とも言える本作の主人公は、グランベロス帝国と戦うカーナ王国の隊長「ビュウ」。そして、彼と惹かれ合う幼馴染であり、カーナ王国の王女でもある彼女こそが、今回取り上げるヨヨなのです。
幼い頃から関係を築き、成長した今は相思相愛となったビュウとヨヨ。しかし敵の猛攻により引き裂かれ、彼女は帝国に囚われてしまいました。また王国も壊滅しますが、ビュウは反乱軍を率いて力強く戦い続けます。
そのひたむきな努力が実り、年単位の月日こそかかってしまいましたが、ヨヨの奪還に成功。彼女を取り戻す念願が叶う展開を迎えます。しかしこの時のヨヨは、ビュウを最も慕っていたかつての彼女ではありませんでした。
帝国に囚われていた間、帝国の将軍「パルパレオス」がヨヨの面倒を見ていました。それをきっかけにふたりの距離が徐々に近づいていき、ヨヨの気持ちは完全にパルパレオスへと向いてしまい──その結果、ビュウへの恋心は消え失せ、パルパレオスの恋人となりました。
この展開だけでもショックですが、その関係性の表現も非常に秀逸(=ショッキング)。例えば、かつてビュウのドラゴン「サラマンダー」に乗せてもらった時、ヨヨは「サラマンダー、とってもはやいね!」と嬉しそうにはしゃいだことがありました。
ですが、後にパルパレオスのドラゴンに搭乗した時、「サラマンダーより、ずっとはやい!!」と賞賛するヨヨ。速いのは事実だとしても、それを表現するためにわざわざサラマンダーを引き合いに出すなんて……あまりに自分本位な物言いに、プレイヤーはダイレクトにダメージを受けました。
このほかにも、ビュウとの思い出の場所にパルパレオスを連れていき、思い出を上書きするような行為をしたり、「私、子供の頃にはもう戻れないの……」「大人になるって悲しいことなの……」とビュウとの関係を一方的に過去のものにするなど、悪い意味で自由奔放な振る舞いを貫きます。
パルパレオスに惹かれたり、愛情の表現を隠そうとしない様子を見ていると、わざとビュウを傷つけているのではなく、自分の感情にとても素直で、ある意味純粋なだけかもしれません。一般的な人付き合いが少ない王女という立場も、ヨヨの性質に拍車をかけた可能性があります。
しかし、責任ある一国の王女という点はもちろん、ひとりの女性としても、その言動や振る舞いは身勝手が過ぎるというもの。長年の監禁生活など、考慮すべき点があるのも事実ですが、「それを踏まえても目に余る」と感じたプレイヤーが多く、三大悪女の代表的存在として今も語り継がれています。
ちなみに、ゲームを進めるとパルパレオスも反乱軍に加わるため、彼とヨヨが仲良くする姿をたびたび見せつけられるのも罪深いポイントでしょう。