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声優にかかる、ギャラに見合わない過重な負担 廃業や降板が起きる理由【この業界の片隅で】

声優の廃業や降板が、たびたびニュースになっています。理由はあくまで個人的なものでしょうから、一概には言えませんが、背景には新型コロナウイルスによる業界の変化があると考えて、まず間違いないでしょう。アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が解説します。

コロナ禍で激変したアフレコの方法

コロナ禍で、アフレコの方法は大きく変わった(画像:写真AC)
コロナ禍で、アフレコの方法は大きく変わった(画像:写真AC)

 従来のアニメのアフレコは、「大勢の人が」「密閉された空間で」「マスクなしで声を出して飛沫を発生させる」方法で行われるものでした。ほぼ間違いなく、新型コロナウイルスのクラスター感染が起きる環境です。声優業界にとって、感染拡大防止策を規格化して遵守させることは、差し迫っての重要な課題でした。

 現在はかつてと違い、「収録ブースに一度に入る人数は3人程度」「スタンドマイクの間はビニールシートで区切る」「出入口での検温やアルコール消毒、収録ブースの防音扉を定期的に開けての換気を義務化する」などのルールのもとでアフレコは行われています。

 これで現場での感染を激減させることに成功したのですが、当然、別の問題も出てきます。ひとつには、1作品あたりの収録時間が以前よりも目に見えて長くなったことです。

 1作品あたりの収録時間が長くなればなるほど、音響制作スタジオ側にとっては、「よりコストがかかり」「利益率も悪くなる」という状態になります。スタッフは長時間の稼働を余儀なくされ、案件の数も多くは入れられなくなるからです。その結果として、少しでも省力化する必要が出てきます。

 具体的にどうするか? まず考えられるのは、キャスティングする声優の頭数を単純に減らすという方法です。主役を務める人気声優は外せませんから、外すのは、これから人気が出るかもしれない新人声優です。ひと言やふた言しかセリフのない端役やガヤ(背景の群衆がガヤガヤしゃべる声)くらいなら、主役級で来ている人気声優でもお願いすれば、追加費用も時間もほとんどかからずに演じてもらえます。

 ガヤや端役から頭角を現し、現場の音響制作スタッフさんに顔と名前を覚えてもらうことで、誰もが知る人気声優になっていく方法があります。これまでも狭き門だったことは間違いないのですが、コロナ禍によって、その門がますます狭くなってしまったと言わざるを得ません。

 加えて、現在は制作終了後の打ち上げパーティーなども、ほぼ行われなくなっています。新人声優が顔と名前を覚えてもらう手段自体が、かつてと比べて激減しているわけです。そういった状況では、「キャリアが頭打ちだと感じたら、すっぱりと辞めて別の道に進もう」と考える声優が増えても、何ら不思議ではありません。

【画像】『水星の魔女』からも 体調不良による代役となったキャラ

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