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名作アニメの「リメイク」が多い理由 ファンに「嫌われない」作り方とは?【この業界の片隅で】

TVアニメ『うる星やつら』や映画『THE FIRST SLAM DUNK』など、名作アニメをリメイクする動きが絶えません。このようなリメイク物は、どんな理由で、何を目標に作られているのでしょうか。主題歌の変更や声優の交代にまつわる話もまじえて、アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が解説します。

業界大手にリメイク物が多い理由

声優交代について批判が噴出したが、公開後高評価となった『THE FIRST SLAM DUNK』 (C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners
声優交代について批判が噴出したが、公開後高評価となった『THE FIRST SLAM DUNK』 (C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners

 いわゆる「製作委員会の偉い人」といえど、頭のてっぺんからつま先まで計算高いわけではありません。したたかで油断ならないという評判のある人ほど、腹を割って話してみると、アニメ自体が純粋に好きで、子供の頃に夢中で見ていた作品について目を輝かせて語ってくれたりします。

 そういった偉い人にとって、リメイク物の企画はうってつけです。大好きなタイトルを自分自身で手がけられるうえ、リクープ(かけた費用を売上として回収すること)の見込みも立てやすいからです。

 たとえば1980年代にTV放送された『うる星やつら』は、視聴率が常に20%を超える人気番組でした。ごく大ざっぱに、1%につき40万人程度が番組を見ていたと仮定すると、約800万人のファンがいることになります。

 そのファンが、放送当時20歳前後だったとすれば、2022年の今は60歳辺りでしょう。さすがにアニメ離れしているかもしれませんが、お子さんやお孫さんなどは別です。その人数がざっくり何人くらいで、購買単価がこれくらいだとしたら……いかにも説得力がありそうな数字を並べた企画書を作り、契約を締結して出資金を引き出す。それが、製作委員会の偉い人、なかでも「幹事会社」と呼ばれる会社のプロデューサーの重要な役割です。

 生涯のマイベストアニメの新作を自分で作り、800万人の目を輝かせたうえ、ガッポリ儲けることもできる。企画プロデューサーたる者、乗らない方がおかしいくらいの話でしょう。それなりの規模の会社に勤めている社員であれば、作品のヒットが出世の道を開いてくれる可能性すらあります。

 業界大手の東映アニメーションにリメイク物が多いのは、実はこれが理由だったりします。四半期ごとの決算情報の公表が義務付けられている上場企業ですので、企画ごとの費用対効果も株主から厳しく問われます。そうすると、『美少女戦士セーラームーン』や『スラムダンク』など、自社コンテンツとして扱いやすいうえ、最初から数多くのファンのついている作品をリメイクすることが、企画としてのファーストチョイスになるのです。もともと、そういったタイトルが好きで入社したのであれば、充分な情熱を傾けて仕事をすることもできます。

【画像】賛否両論はやむなし? 超ビッグタイトルのリメイク作(6枚)

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