伝説の実写版『サザエさん』がアマプラで配信中 マスオとの交際は「クリスマス」だった?
長年、幻の作品としてソフト化もされてこなかった江利チエミによる実写版『サザエさん』全10作がAmazonプライムビデオやテレサで配信中です。知られざるサザエさんとマスオさんの出会い、婚約、結婚、出産も描かれていて……?
江利チエミ主演の実写版は、サザエさん像の「原点」?

今年2022年も早いもので、クリスマスの時期です。実は、結婚する前のサザエさんとマスオさんがつき合うことになったのは、クリスマスパーティにマスオさんを誘ったことがきっかけだということをご存じでしょうか。
そんなサザエさんとマスオさんの出会いから婚約、結婚、出産を丁寧に描いた実写版映画『サザエさん』がAmazonプライムビデオやテレサなどの動画配信サービスで配信中です。
この実写映画シリーズは1956年からスタートし、全10作が制作されましたが、ソフト化もされておらず、これまでは名画座の特集上映やCSの限定的な放送などでしか見られませんでした。長年、「激レア」作品として知られていたものです。
今でこそ『サザエさん』といえば、国民的アニメというイメージが強いかもしれませんが、アニメ『サザエさん』が放送開始されたのは1969年。それまではザザエさんといえば、江利チエミの実写版というイメージが強かったのです。
実写化自体は江利チエミの前にも東屋トン子、高杉妙子によってされてきたものの、のちに制作されたドラマ版や舞台版なども含めると、一番長くサザエさんを演じたのは、江利チエミに他ならないのです。
さらにいえば、現在もアニメ版の声優を務める加藤みどりの「サザエさん像」の原型になっているのも、江利チエミによる実写版だといえます。もともと加藤みどりの声質が江利チエミと似ているというのもあるのですが、声の張り方、特にマニアックはところでは「カツオっ!」の言い方が、江利チエミ版サザエさんに酷似しているのです。
初期のアニメ版『サザエさん』は、『トムとジェリー』を参考にして制作されていることもあって、ドタバタ劇要素が非常に強いという特徴がありました。そのためサザエさんが包丁を持ってカツオを追いかけまわす……といった過激描写が多く、放送禁止用語も連発。今ではなかなか放送が難しいエピソードもあるのですが、江利チエミの実写版は、原作とアニメ版の中間的なテイストで、ドタバタ劇ではあるものの、安心して観ていられる昭和喜劇という印象が強いといえます。
だからこそ、サザエさんのもつ人情やフェミニズム的メッセージ性が直接的に伝わりやすく、おっちょこちょいだけど情に厚い女性のドラマとして非常に優れた物語となっています。
まだまだ「女性は奥ゆかしくあるべき」といった昭和的考えが一般的だった時代に、あえて異議を唱え、全体的に男性陣が情けなく描かれているのも特徴的といえます。