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『戦闘メカ ザブングル』キャラの瞳が「ネジ目」なのはナゼ? 紆余曲折あった企画経緯の証

富野由悠季監督によるロボットアニメ『戦闘メカ ザブングル』のキャラクターは、「ネジ目」と呼ばれる独特なデザインの瞳が特徴的です。その瞳は、紆余曲折あった企画経緯の証でした。

印象的な「ネジ目」の理由

主人公のジロンらが描かれた『戦闘メカ ザブングル』Blu-ray BOX PART-1(フライングドッグ)
主人公のジロンらが描かれた『戦闘メカ ザブングル』Blu-ray BOX PART-1(フライングドッグ)

 どんなアニメ番組にも「企画立ち上げ秘話」はあるはずですが、そんななかでも『戦闘メカ ザブングル』はかなり紆余曲折があってできあがった作品です。その証拠のひとつが、主人公ジロン・アモスを含むキャラクターたちの、俗に「ネジ目」と呼ばれている斜めに光が走る特徴的な瞳のデザインです。

 あの不思議な瞳は、どうして出来上がったのでしょうか。

 当時のロボットアニメのほとんどは、玩具メーカーがスポンサーになることで成立していました。そこでアニメ制作会社の多くは玩具メーカーにも企画プレゼンテーションをするのですが、制作会社のサンライズ(当時)が提示した、のちに『ザブングル』となる元企画は、偶然にも他社が同時期に持ち込んだ企画と類似点が多いものでした。

 実は『ザブングル』は、宇宙を舞台にした、巨大変形宇宙船ロボットものとして企画された作品だったのです。ですが類似の他社企画があると聞いたサンライズ側は、急遽企画内容を全く別のものに変更することにしました。なぜなら、類似の他社企画と比較検討しているような時間的ゆとりは無いと知っているからです。

 玩具メーカーが玩具を実際の商品にするまでには、当時は9~10ヶ月ほどが必要でした。そのために番組企画は放送の一年前には決定させておきたいのです。そこに間に合わせるには、企画自体を作り直した方が早いというのが、当時のサンライズ側の判断だったのです。

 こうして新たに作られたのが、西部劇をモチーフとした、後日『ザブングル』となる企画です。この一新された企画に併せて初めてデザインされたのが、元の企画にはなかった、あの青いロボットでした。西部劇イメージに併せ、幌馬車のようにカーゴを引く車が人型ロボットに合体変形。胸には保安官バッヂをモチーフにした丸いデザインが、頭の形にも当初はテンガロンハットのイメージが盛り込まれていました(後に帽子の鍔部分はほぼなくなり、最終デザインからは、ほとんど伺い知れませんが)。

 一方、元々商品化予定で、宇宙を飛ぶはずだった変形巨大戦艦ロボットも、主人公たちの暮らしのベースとして大地をゆく戦闘艦「アイアン・ギアー」となりました。

 その後、はじめに監督予定だった演出家の要望もあり、さまざまな制約や変更にも臨機応変な対応をしてくれる富野監督に監督が引き継がれます。

 こうしてさまざまな経緯をたどるなかでも「西部劇」という企画ポイントは守られ、オープニングでの銃のアクションや、馬が走るようなテーマ曲のリズムなど、西部劇モチーフが下地だったからこそでき上がったものが本作には生きています。

 では、あの「ネジ目」の意味は? あれこそが、この番組の企画変更の証拠です。

 キャラクターデザインの湖川友謙さんは、変更前の企画から参加されており、最初の企画の舞台の中心が、宇宙船の人工的な世界であることから、瞳の中に蛍光灯の光が映っているというイメージで、あの斜めの光を考えついたそうなのです。その瞳が気に入り、舞台が太陽の下になってもそこは変えずに行くことを希望すると、富野監督もこれを快諾しました。

 ただし、このときに富野監督が湖川さんに出した条件ありました。それは、鼻の下や首もとに真っ黒に塗りつぶした「影」を入れることでした。「西部劇の強い太陽光線を表現」というのがその理由です。

 ある意味では、この矛盾した条件が混然一体となったことで『ザブングル』の独特な作品世界は作り上げられたといってもいいでしょう。

 ファンの間では、色々な部分に、これまでにない「掟破り」があると言われる『ザブングル』ですが、企画決定までの経緯も、またなかなかユニークだったと言えるのかもしれません。

『戦闘メカ ザブングル』が放送されてから40年。最近になっても『ザブングル』が各所で取り上げられているのを見かけると、当時制作に携わっていた身にはうれしいものですね。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

(風間洋(河原よしえ))

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