『鬼滅の刃』刀鍛冶の「ひょっとこ面」には意味があった? 山の民の製鉄神話とは
2023年4月の放映が発表され、期待が高まる『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』には、ひょっとこ面をつけた刀鍛冶たちが登場します。刀鍛冶に伝わる山の民の製鉄神話とは?
炭治郎が向かう刀鍛冶の隠れ里
アニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』は、2023年4月からの放映が決定し、2月初旬には第1話を含む特典映像が劇場公開されるワールドツアーも開催予定。年明けからじわじわと盛り上がっていきそうです。
ところで、『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』の舞台となる「刀鍛冶の里」とはいったいどういう場所で、そこに住む人びとはどういう存在なのでしょうか。
※当記事では『鬼滅の刃』でアニメ化されていないエピソードについての記述がありますのでご注意下さい。
前シリーズの『鬼滅の刃 遊郭編』で日輪刀を刃こぼれさせてしまった竈門炭治郎は、激怒しているという刀鍛冶の鋼鐵塚(はがねづか)に謝るため、刀鍛冶の里へと向かうことになります。鬼と戦える唯一の武器、日輪刀を作れる刀鍛冶の存在は、鬼殺隊にとっても最重要機密。炭治郎は厳重に目隠しなどをされて、里の場所が分からないように運ばれていきます。まさに刀鍛冶の里は「隠れ里」というわけです。
そんな刀鍛冶の里の住人は全員、ユーモラスなひょっとこのお面をつけているのが特徴です。この「ひょっとこ」とは主に、里神楽に登場するお面で、しばしば「おたふく」とセットで登場します。
ひょっとこの語源にはいくつか説がありますが、有名なもののひとつが、「火男(ひおとこ)」のことで、かまどの火の扱いが上手い者を指すという説があります。なぜなら、ひょっとこは、山のなかに住む製鉄の民だったからなのです。あのすぼめた口はかまどの火を吹いてうまく調節するためにあり、顔をゆがめてのぞきこむような顔つきは鍛冶場のかまどの火の具合を見る時の表情だと言われています。あの奇妙なひょっとこのお面にも、きちんとした意味があったのですね。
古来、日本では山に住み、金属を掘って暮らす製鉄の民がいました。彼らは平地で稲作をする普通の人びと(民俗学では常民と呼びます)とは少し違う暮らしをしており、それゆえに差別されたり、攻撃されたりしたこともありました。
例えば、日本神話にあるスサノオノミコトによるヤマタノオロチ退治の神話は、銅の剣しか作れなかった古代の日本で、製鉄の民を征服して鉄の剣を手に入れた勇者の物語だという説もあります。
スタジオジブリの『もののけ姫』は、山に暮らす「たたら製鉄の民」と「古い獣の神」、そして「中央政府の手先」がせめぎ合う物語という構造になっています。『もののけ姫』の舞台は室町時代中期。「ひょっとこ」面が出来上がり、各地にひろがっていった時代と重なる……そんな考察とともにアニメを見れば、「刀鍛冶の里編」をより深く楽しめるのではないでしょうか。
(マグミクス編集部)