購入した『サムライトルーパー』単行本がまさかのBL? 背景に「美少年アニメブーム」が
1988年に放送されたTVアニメ『鎧伝サムライトルーパー』。鎧擬亜(ヨロイギア)と呼ばれるプロテクターをまとった5人の少年は、当時キッズだった男の子たちのヒーローになるはずでした……。
「おおらか」な昭和の書店での出来事
1988年に放送されたTVアニメ『鎧伝サムライトルーパー』は、5人の少年が鎧擬亜(ヨロイギア)と呼ばれるプロテクターを身にまとい、新宿を制圧した妖邪帝王「阿羅醐(アラゴ)」と彼の軍団「妖邪」に立ち向かうヒーロー物語です。『聖闘士星矢』の成功を受けて企画されたであろう作品であり、ヒーローに憧れる男の子へと向けて作られた作品でした。
「オレの心を鎧が走る!」
主人公・真田遼が次回予告の最後に発していたキャッチコピーを見ると、今でもその凛々しい声を思い出す人も多いのではないでしょうか。
当時はユニークなオモチャが発売され、世界観を再現したかのようなCMがよく流れていました。たとえばスプリングを内蔵し、独特のアクションを繰り出すフィギュア「超電導」シリーズ。超電導シリーズとともにタカラ(現・タカラトミー)が発売した、腕に装着するタイプのオモチャ「烈火拳」。
主要キャラクターである烈火のリョウ(真田遼)、天空のトウマ(羽柴当麻)、光輪のセイジ(伊達征士)、水滸のシン(毛利伸)、金剛のシュウ(シュウ・レイ・ファン)のプラモデルもありました。そして書店には青磁ビブロスが出版したアンソロジー本。
『鎧伝サムライトルーパー』が大好きで、特に水滸のシンに憧れていた筆者は、新たなストーリーを体験するべくそのアンソロジー本を購入しました。そして驚きました。なぜならその本は同人作家による「BL本」だったからです。
当時はまだBLという呼び方はなく「やおい本」と呼ばれていた時代。書店のコミックコーナーには『サムライトルーパー』のような女性向け成人アンソロジー本、そしてもちろん男性向けの成人アンソロジー本も当たり前のように棚に収まっていました。それを公式のコミックだと勘違いして、うっかり購入してしまったのです……。
ただショックだったのはBL本だったからではありません。それなりに厚い本には戦闘シーンが一切なく、全ページにわたって少年たちの淡い恋模様が描かれていたのです。一番見たかったのは、少年心をくすぐるあの色とりどりの格好いい鎧擬亜(ヨロイギア)。それがどのページを見ても載っていない!「イチャイチャしてんな! 戦え!」と当時の筆者は思ったものでした。
もともと、テレビ向けのオリジナル企画で原作コミックのようなものはありませんでしたから、新しい物語が喉から手が出るほど欲しかったあの時代。その後も本の傾向が分かっていながら、つい何度も手に取ってしまったのでした。