『仮面ライダー』偽ヒーロー「ショッカーライダー」がただの偽物ではなかった理由とは?
ショッカーライダーがただの偽物ではなかった理由

ショッカーライダーは第91話ラストにシルエット的に登場し、続く予告編で視聴者の期待感を煽りました。そこから第94話までの登場となりますので、その登場回数はゲストキャラとしては異例の厚遇ぶりです。ストーリーも3話連続で、メインライターの伊上勝さんが得意とする秘宝争奪戦になっていました。
もともと原作の石ノ森章太郎先生の描いたマンガ版『仮面ライダー』でも、同様に仮面ライダーが敵となって現れる「13人の仮面ライダー」というストーリーがあります。ここで1号である本郷猛は死亡し、洗脳から解けた一文字隼人が2号となるという重要なエピソードでした。
このマンガはTVより1年以上早く発表されており、放送当時にはコミックスにもなっています。そんなことから当時の子供は事前に仮面ライダー同士の戦いを知っており、連続ストーリーということもあってハラハラする展開でした。放送期間が年末年始ということもあって、どこの家庭も盛り上がったことでしょう。
ショッカーは自分たちが作った仮面ライダーをどうしてまた作らないのか?という疑問に関してのアンサーでもあったエピソードになるわけですが、この危機をダブルライダーが特訓という形で乗り越えたことで、性能が同じでも精神的な成長が強さに直結するという部分が『仮面ライダー』という作品らしいと筆者は思います。
また、昨今では珍しくなくなった「悪の仮面ライダー」たちの元祖とも言えますが、変身前がないためか怪人というポジションに収まっていました。特に個性らしい部分も描かれなかったことも、その要因のひとつでしょう。
このショッカーライダーの登場以降、たびたび偽ライダーといった存在が作品に登場するようになりました。
シーラカンスキッドの化けたデストロンライダーマン(『仮面ライダーV3』登場)、カメレオンファントマの化けた偽Xライダー(『仮面ライダーX』登場)、サンショウウオ獣人の化けた偽アマゾンライダー(『仮面ライダーアマゾン』登場)、ドロリンゴの化けた偽スカイライダー(『仮面ライダー(新)』登場)、ガイナニンポーの化けた偽仮面ライダー1号(『仮面ライダーBLACK RX』登場)などです。
これらは変身できる怪人が偽ライダーに化けて、混乱させることなどが目的でした。そう考えるとショッカーライダーとは似て非なる存在と言えます。ショッカーライダーが偽物となった理由は、アンチショッカー同盟という組織をスパイするといった目的が急遽生まれただけで、ダブルライダー抹殺が本来の役目でしょう。ただの偽物なら6体もいらないはずです。
そう考えると、ショッカーライダーは昭和で使われた偽ライダーよりも、平成シリーズでたびたび登場する悪の仮面ライダー「ダークライダー」に近しい存在なのかもしれません。ただし、前述したようにゲスト怪人と同じく個性を持たせなかったことでライダーの偽物というポジションから抜け出せませんでした。もしも変身前が登場していれば、同時期の『快傑ライオン丸』のタイガージョーや、『人造人間キカイダー』のハカイダーのようなアンチヒーローとなれたかもしれません。
(加々美利治)