作画、視聴者…何かを置き去りにしたアニメ3選「あわや放送事故」「全然動かない(笑)」
人員や予算、製作期間など、アニメ作品のクオリティにはさまざまな要素が関係してきます。なかには、視聴者が思わず「どうした!?」とツッコミたくなるような、「何かを置き去りにした」アニメも。その内容は作画だったり設定だったりと、作品によりさまざまです。この記事では、「何かを置き去りにしてしまった」アニメを3作品ご紹介します。
え、これ本編なの…? 視聴者もハラハラ
近年では『鬼滅の刃』『チェンソーマン』など、TVシリーズでもかなりクオリティの高いアニメが制作されるようになりました。しかし、さまざまな理由から作画や設定に異変が起き、「何かを置き去りにした」と、視聴者が騒然とする作品も。この記事では、良作ではありながら「何かを置き去りにしてしまった」アニメを3作品ご紹介します。SNSでも「絵柄変わりすぎ」「全然動かない(笑)」と評判です。
●原作はいいのに作画を置き去りに?『ロスト・ユニバース』(1998年4月~放送)
マントをなびかせる女顔の美形青年・ケイン(CV:保志総一朗)は、ロストシップ・ソードブレイカーに乗り宇宙を駆け巡る、トラブル・コントラクター(厄介ごと請負人)です。ケインは制御コンピューターのキャナル(CV:林原めぐみ)とともに、広域犯罪組織デュゴール・コネクションのオークションに忍び込む依頼を受けていました。
オークションにかけられた盗品を奪還するため、会場に潜入したケインとキャナル。しかしそこには、ダンサーにふんした探偵・ミリィ(CV:柊美冬)も潜入していたのでした。鉢合わせた3人は警備員に見つかったうえ、マントをバカにされて怒ったケインは、警備員を殴り倒して――?
『ロスト・ユニバース』は、同名ライトノベル(著:神坂一、イラスト:義仲翔子/富士見書房)を原作とするアニメです。製作期間の短さや制作・経営間の連携問題などから、作画のクオリティが著しく低かった本作。そのすごさは、第4話(各種動画配信サイトでは第12話)「ヤシガニ屠る」のあまりの崩壊ぶりに、作画崩壊を指すネットスラング「ヤシガニ」が生まれたほどです。
原作はライトノベル『スレイヤーズ』の著者・神坂さんの著作で、声優陣もアニメ『スレイヤーズ』のメインキャストが務めている本作。豪華スタッフ・キャストだったにもかかわらず、作画が公開予定に間に合わず、第1話のオープニング映像は製作途中のまま放送されました。
「只今 作業中」「UNDER CONSTRUCTION(工事中)」というカットが差し込まれ、制作が間に合っていたCGパートと各キャラの静止画でオープニングが構成される事態に。そして、「ヤシガニ」の語源となった第4話では、カット数が少なすぎてカクカクした動き、画風やバランスの崩れた絵が「紙芝居」と揶揄(やゆ)されるほど。現在の動画配信サービスでは、リテイク版が配信されています。
また、美川べるの先生のギャグマンガが原作のアニメ『真 ストレンジ・プラス』の「第2話 EXCHANGE」では、本作の製作途中版オープニングのパロディがエンディングに流されています。一方で、3DCGを使ったロストシップや戦闘・爆発の描写は当時画期的だったうえ、クオリティも高く話題になりました。この作品のリテイク版は、「dアニメストア」「FOD」「バンダイチャンネル」などで見ることができます。
●声優やEDはスゴいのに視聴者を置き去りに?『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』(2015年4月~放送)
近未来都市・ネオサイタマで勃発した、ニンジャ抗争。「サラリマン」フジキド・ケンジ(CV:森川智之)は、抗争に巻き込まれ、生死の境をさまよっていました。そのうえ、フジキドの妻子は抗争で死亡。ニンジャのひとり・オフェンダー(CV:江川大輔)は、倒れて動かないフジキドに近づき、顔の皮をはごうとします。
するとフジキドは「ニンジャ、殺すべし!」とつぶやき、オフェンダーの顔を片手で補足。そのままオフェンダーを振り回し、頭から地面にたたきつけたのです。続けて、その場にいたもうひとりのニンジャもあっという間に倒したフジキド。彼こそは、ニンジャを殺すのが仕事だという、「ニンジャスレイヤー」だったのです。
『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』は、小説『ニンジャスレイヤー』(作:ブラッドレー・ボンド、フィリップ・ニンジャ・モーゼズ、イラスト:わらいなく/KADOKAWA)を原作としたアニメです。その独特な世界観とFLASHアニメのような画作りは、賛否両論を巻き起こしました。
「アメリカ人が書く日本の物語」という、異色の作品である本作。原作は、アメリカ人作家コンビの小説を、翻訳チームが日本語に訳しTwitter上で連載したものです。その内容が、小説として出版されています。そして、作家コンビの日本観を反映した独特な世界観は、初見の読者が理解するには少し時間のかかる内容かもしれません。
そして、制作会社は『キルラキル』や『SSSS.GRIDMAN』を手掛けた、作画力の高さに定評のある「TRIGGER」でした。しかし、立ち絵が左右に動くFLASHアニメのような作りが作品の大半を占めており、「手抜きでは?」「これは紙芝居アニメ」と賛否が分かれました。
その一方で、「アイエエエ!」「ドーモ、○○=サン」といった、独特な「忍殺語」をしっかりと再現。小説における地の文もナレーション(CV:ゴブリン)として語られ、声優も森川さんはじめ速水奨さん、斎藤千和さん、雨宮天さんと豪華。エンディングテーマも毎話変わり、「the pillows」「Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)」などが手がけるという充実ぶりでした。
説明が実態に追い付かない新感覚アニメですので、まずは第1話を見てみることをお勧めします。この作品は、「dアニメストア」「U-NEXT」「バンダイチャンネル」などで見ることができます。
●第1期のファンを置き去りに?『みなみけ~おかわり~』(2008年1月~放送)
南家三姉妹は、しっかり者で優しい長女・春香(CV:佐藤利奈)、ちょっとおバカで破天荒な次女・夏奈(CV:井上麻里奈)、クールでたまに毒舌な三女・千秋(CV:茅原実里)の3人組。お正月を迎えた3人は、部屋でだらだらしながら、暇を持て余していました。
無茶ぶりされて一発芸を披露する春香、お年玉のことを細かく書いた手帳をなくして焦る千秋、ずっと食べている夏奈。そこに南冬馬(みなみ・とうま/CV:水樹奈々)、マコト(CV:森永理科)、藤岡(CV:柿原徹也)も合流し、親戚のタケル(CV:浅沼晋太郎)の車で一同は温泉宿へ。そんななか、「マコちゃん(女)」として通っているマコト(男)は、ひとりピンチを迎えていて――?
『みなみけ~おかわり~』は、マンガ『みなみけ』(作・桜場コハル/講談社)を原作としたアニメで、第2期にあたります。日常系アニメであるはずの同シリーズですが、本作ではなぜか暗くぎすぎすした雰囲気が漂い、暗めのオリジナルキャラ・フユキ(CV:斉木美帆)が登場。「どうしてこうなった」と、物議をかもしました。
第1期では、仲良し3人姉妹のほのぼのとした日常を描いていた同シリーズ。しかし、第2期からは監督や制作会社など、製作陣がほとんど交代しました。その影響か、作品は全体的に暗い雰囲気になっています。ほとんどの回で外の天気が悪く、ところどころで妙にリアルな作画を採用。モブキャラの顔が塗りつぶされていたり、3姉妹のけんかがぎすぎすしていたり……と、暗めの演出が目立ちました。
そして、本作から登場する転校生のフユキは、アニメオリジナルキャラです。3姉妹とちょくちょく関わるものの、内向的で自信なさげなフユキは、あまり楽しそうな顔をしません。第6話「冷めてもあったか、ウチゴハン」では、うじうじするフユキに、千秋が「お前見てるとイライラするんだよ」と怒るほど。
ほのぼのとした原作・第1期との雰囲気の違いに、「みなみけに第2期はない」と発言する視聴者も。こうした評判を受けてか、第3期以降は作中に暗めの演出はなくなり、第1期に近いほのぼのした雰囲気に戻りました。なお、残念なイケメン・保坂(CV:小野大輔)だけは、第2期でもその気持ち悪さを見せつけています。この作品は、「dアニメストア」「U-NEXT」「FOD」などで見ることができます。
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「何か」を置き去りにしてしまったアニメには、やはりそれなりの理由や反応があるようです。しかし、こうして話題になった分、アニメ好きの間で共通言語になりうるのも事実。無難に評判の良いアニメを見るのに飽きた方は、ぜひ上記3作品を見てみてくださいね。
※配信状況は記事掲載時点のものです。
(新美友那)