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『ファイヤーマン』50周年 強すぎた裏番組『サザエさん』との因縁とは

50年前に放送開始された特撮ヒーロー作品『ファイヤーマン』は、怪獣特撮の原点回帰を図った意欲作でした。しかし、その前に立ちふさがったのは、驚異の視聴率を誇るアニメ作品『サザエさん』です。その因縁は、21世紀に入っても続きました。

裏番組に翻弄された悲劇の特撮ヒーロー作品

「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.35ファイヤーマン」(講談社)
「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.35ファイヤーマン」(講談社)

 1月7日は1973年に特撮ヒーロー番組『ファイヤーマン』が放送開始した日です。2023年で、もう50周年になります。ウルトラシリーズとはまた違った魅力を持つ、『ファイヤーマン』について振り返ってみましょう。

『ファイヤーマン』は、円谷プロ創立10周年記念番組として製作された作品です。さらに、日本テレビ開局20周年でもありました。

 企画当初の仮題は『レッドマン』で、円谷プロの伝統的な仮タイトルを引き継いでいます。「怪獣特撮」の原点回帰を目指していた本作は、海と地中から出現する怪獣と戦う巨大ヒーローという、オーソドックスな王道展開を目指していました。

 ヒーローとなるファイヤーマンも巨大な目が特徴的ではありますが、デザインは比較的シンプルで、赤と銀の色合いはウルトラマンを連想させるものです。これらの要素から、シリーズを重ねることで派手になっていったウルトラシリーズとは別の方向性、原典に立ち返った怪獣特撮を目指していたことを感じさせる作品でした。

 当時は特撮ヒーロー番組が乱立し始めて、派手なヒーローが多くなっていった頃だったので、逆にシンプルで王道を進もうとしたのは、「老舗」である円谷プロの意地だったのかもしれません。しかし、筆者のような当時の子供には、地味な印象に映ったことは否めないと思います。

 各社が競って新しいタイプのヒーロー番組を目指していた時期だったので、『ファイヤーマン』のような原点に立ち戻った作品は、時期尚早だったのでしょう。そして何より高い壁となったのが、日曜18時半台の放送枠の裏番組で、当時すでにオバケ番組と呼ばれていた人気アニメ『サザエさん』です。

 このため視聴率は低いままで伸び悩み、同じく特撮ヒーロー番組だった『サンダーマスク』の後番組として、3か月ほどで火曜19時台の枠に移動することになりました。余談ですが、この時間枠では、後に再放送版の『まんが名作劇場 サザエさん』が、1975年4月から放送されています。さらに近年の話ですが、2010年に『ファイヤーマン』がTOKYO MXで放送された時も、日曜18時半台の放送で、またしても『サザエさん』の裏という因縁がありました。

 こういった事情もあって、『ファイヤーマン』は時間帯変更後はオープニング画像の構成を一部変え、その話数の怪獣を「先見せ」するといったテコ入れを行います。ファイヤーマンも「ファイヤーブレスレット」という強化アイテムを得て、「ファイヤーダッシュ」という派手な必殺技を使うようになりました。

 もっとも、この火曜19時台の枠も安全地帯というわけでなく、TBSは『おくさまは18歳』から続くドラマ枠(当時の裏番組は『赤い靴』)、フジはタツノコプロ制作のアニメ作品(当時の裏番組は『けろっこデメタン』)といった「鉄板枠」が並ぶ激戦区です。そのなかで切磋琢磨し、『ファイヤーマン』も後世に残るような名エピソードをいくつか生み出していきます。

【画像】超豪華!懐かしの73年の特撮番組(9枚)

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