「物議を醸した」ジャンプマンガ3選 「攻め過ぎ」て謝罪文・回収も
今も昔も、数々の世界的大ヒット作を生み出し続ける破竹の勢いの「週刊少年ジャンプ」。その輝かしい歴史のなかには、“セクハラを助長させる”とバッシングを受けたマンガや、掲載誌の回収騒ぎになった事件、読者が困惑した作品も存在します。ここではさまざまな意見が飛び交い、物議を醸した「ジャンプ」作品を取り上げます。
今だったら“叱られ”だけじゃ済まされない? 騒動になったマンガたち
異能力で戦うバトルマンガ、いろんな美少女に惚れられる恋愛マンガなど、世界中のファンを魅了する「週刊少年ジャンプ」のマンガたち。その自由な発想と表現で、時代の子供たちに愛されてきました。
ですが自由過ぎたために、賛否両論の物議を醸したこともあります。エッチ過ぎて社会問題に発展したマンガ、ギャグが攻め過ぎたために自主回収となったマンガ、トラウマを与えた鬱マンガ……昔の「週刊少年ジャンプ」で問題視されたマンガを取り上げます。
●『ハレンチ学園』(1968年~1972年)
『デビルマン』『マジンガーZ』『キューティーハニー』など代表作に事欠かない巨匠漫画家・永井豪先生の出世作が『ハレンチ学園』です。布切れ1枚を羽織る原始人スタイルでオネエ言葉のヒゲゴジラ先生や、イタズラ好きな生徒たちのハチャメチャな学校生活を描いた『ハレンチ学園』は、不謹慎な内容として、当時の世間から叩かれました。
1969年にTVで流れていた、猛烈な風で小川ローザのスカートがめくれて「オー! モーレツ」とつぶやく丸善石油のCM。これが当時の小学生を中心に「スカートめくり」として流行して、『ハレンチ学園』でも「モーレツごっこの巻」として描かれることになりました。
このセクハラがPTAの抗議活動に取り上げられることになり、“子供に悪影響を及ぼす”セクシュアルな作品として糾弾の対象となったのです。「少年ジャンプ」編集部へも、各地のPTAや教育委員会から多数の苦情が寄せられたそうです。
そんな『ハレンチ学園』は社会から糾弾される一方で、TVドラマや日活の映画化など、繰り返し映像化される大ヒット作となりました。また、当時は新興勢力だった「週刊少年ジャンプ」の名を一躍メジャーに押し上げることにも貢献したのです。『ハレンチ学園』は「ジャンプ」創刊時の立役者として、今なお語り継がれています。
●『燃える!お兄さん』(1987年~1991年)
もうひとつ「週刊少年ジャンプ」の歴史において、今でいう“炎上”となった事件があります。1990年45号の『燃える!お兄さん』で描かれた、用務員を職業差別しているとされた回「サイボーグ用務員さんの巻」です。
主人公の国宝憲一(こくほう・けんいち)が嫌っている早見姿郎(はやみ・しろう)先生は、学校の都合で用務員さんに転職しました。するとケンイチは、ここぞとばかりに早見を下に見る発言を繰り返します。
「とゆうことはもう先生じゃないんだな!!」「ただの働くおっさんなんだな!!」と確認した上で、「バーカ」「早見のベンジョムシーッ!!」「おまえのカーチャンでーべーそ!!」「なにいってるのだバカ!!」「おっさんはもう先生じゃないのだ。先生じゃなきゃタダの人だからなにをいってもかまわないのだ!!」など、悪口のオンパレード。
真意としては、ケンイチが用務員という職業を蔑んでいるわけではなく、嫌いな早見先生への攻撃だったわけですが、行き過ぎた描写が問題となり、作品名の通り“燃えてしまった”お兄さんとして謝罪文と掲載誌の回収という騒動になりました。ちなみに集英社に1990年45号を送ると、ボールペンと交換できるという回収方法だったと記憶しています。ですが筆者はそれをせずに、今でも実家に保存しているのも良い思い出です。
●『海人ゴンズイ』(1984年)
「週刊少年ジャンプ」で当時の子供たちにトラウマを与えたマンガとして有名なのが、1984年にジョージ秋山さんが連載した『海人ゴンズイ』です。
アフリカの奴隷船が沈没して、黒人奴隷の子供が日本の流人の島に漂着、その島で子供=ゴンズイが生き抜く物語になっています。まず冒頭から銛で人間を串刺しにしてサメをおびき寄せる殺人シーンや、蛆が湧いている腐った赤ん坊をおんぶする気が触れてしまった女性など、初手からハードな絶望シーンの連続で始まります。
「ねんねんころり~よ」と正気じゃない目つきで、白骨化した子供の死体をあやすヒロインの姿が、当時の読者に恐怖のインパクトを与えました。さらにゴンズイは見た目で差別を受けて迫害されたり、「アチョプ」「マウマウ」「フンム」しか話せなかったり、どこを切り取っても少年誌としては異質なマンガだったのです。
ちなみに同じ号に連載されていたのは『キャプテン翼』『北斗の拳』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『キン肉マン』『キャッツ♥アイ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ハイスクール!奇面組』『Dr.スランプ』『よろしくメカドック』など、そうそうたるメンツです。その中で『海人ゴンズイ』が浮いていたのは想像に難くないでしょう。結果として、11話で打ち切りになってしまいました。
ではジャンプマンガにふさわしくなかったのかと言えば、それも違います。ウツボや殺人サメ、バラクーダといった海の凶悪な生物に立ち向かい、勝利していくゴンズイの勇猛果敢さ。自分を裏切って殺そうとした子供を「ゴンズイともだち」というセリフで許す心。「友情・努力・勝利」のジャンプ魂が、しっかりと刻まれているのです。
(かーずSP)