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手塚治虫自身が忌み嫌った問題作『アラバスター』が復刻、人はなぜ「黒手塚」に惹かれるのか

人間の心の闇の部分を徹底的に描いた、いわゆる「黒手塚」の代表作といわれる『アラバスター』が連載当時の構成内容で復刻されました。現代においても読む者を惹きつける「黒手塚」の魅力について、同作品の企画・編集者にお話を聞きました。

単行本化で200ページにわたる改変

『アラバスター オリジナル版』立東舎刊、本体3,800円+税(画像:立東舎)
『アラバスター オリジナル版』立東舎刊、本体3,800円+税(画像:立東舎)

 手塚治虫の『鉄腕アトム』などに見られる、ヒューマニズムにあふれる作品に対して、人間のダークサイドを徹底して描く作品やストーリーは、いわゆる「黒手塚」としてさまざまな評価がされています。

 その「黒手塚」の代表作といわれる『アラバスター』を、連載当時の構成で復刻した『アラバスター オリジナル版』が2018年12月15日に立東舎より発売されました。

『アラバスター』オリジナル版(左)と、改変された全集版の比較。巻頭のカラー部分。主人公の設定が全集版では黒人に変更されている(画像:立東舎)
『アラバスター』オリジナル版(左)と、改変された全集版の比較。巻頭のカラー部分。主人公の設定が全集版では黒人に変更されている(画像:立東舎)

 同作品は「週刊少年チャンピオン」にて1970(昭和45)年12月から翌年6月まで連載された作品。生物を透明にする光線銃で体が半透明化し醜い姿になってしまった主人公は、世の中の美しいものを憎み、怪人・アラバスターとして破壊工作を繰り返す……といったストーリーで、人間の奥底に潜む復讐と憎悪の心や歪んだ愛を主題とした作品です。

 同作品は手塚治虫自身からの評価が低く、『手塚治虫漫画全集』(講談社)で初めて単行本化された際、作者自身の手で200ページにわたる改変が行われています。

「手塚先生はもともと、作品が単行本化される時に、構成から表現の細部に至るまで積極的に手を入れる方でした。そんななか『アラバスター』は主人公の設定を日本人と外国人のハーフから黒人に変更したことで修正箇所が大幅に増えています。

 単行本化を行った当時の情勢も考慮して表現をマイルドにしたと考えられますが、オリジナルの設定の方が、主人公の苦悩や作中の行動の動機などをより深く理解できると思います」

 こう話すのは、同作品をはじめ、近年の数多くの手塚関連書籍や作品復刻の企画・編集を手がけている濱田高志さん。「手塚先生の自己評価が低いからといって、その言葉をうのみにしてはいけない」と強調します。

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