『ミンキーモモ』最終回の悲劇から40年 「打ち切り」騒動後も無理難題が突きつけられる
果たして衝撃の展開は是か? 非か?

筆者が本放送で第46話を見た時の衝撃は大きなものでした。それは魔女っ子ものというジャンル的に想像もできないシーンがあったからです。
前回までの展開で魔法が使えなくなったモモ。いわば魔法少女でなく普通の女の子になったわけです。そして、これまでの展開のように冒険することもなく普通の生活を送るモモに訪れたのは、交通事故による死でした。
このシーンを見た時の筆者は、最初は夢オチだろうとタカをくくっていましたが、一向にそんな気配もなく、死を決定づける場面が続いて物語は最後を迎えます。実はこの時、すでに本作の新シリーズの開始が告知されていました。それゆえに筆者の頭は疑問符で埋め尽くされていました。
物語としては、モモは死んだ後にも魂と思われる存在は残り、魔法の国の両親でなく、地球にいるかりそめのパパとママの本当の子供として生まれ変わるという流れになっていました。そして、いずれモモが大人になった時、フェナリナーサが下りてくるというモモの夢で第46話は幕を閉じます。
ところが、この46話製作進行中に、またしてもスポンサーから無理難題が伝えられました。別番組で予定されていたオモチャを加えて、番組を延長するようにというオーダーです。こういった二転三転の事態があり、一度は最終回を迎えるはずだった『ミンキーモモ』は急きょ、第2部をスタートさせることになりました。
死んだはずのモモがコスチュームを変え、何事もなくふたたび物語は進行していきます。その謎が解けるのは第2部の最終回となる第63話。実は第2部は、すべて第1部で赤ん坊になったモモの見た夢だったのです。そして、人びとから夢を奪おうとしていた悪夢がモモを苦しめていたのでした。この悪夢との戦いが第2部のメインストーリーというわけです。
この悪夢との戦いでモモを助けることになったのが、それまで「カジラ」としか話せなかったワニのような竜の子供「カジラ」。実はこのカジラこそスポンサーがねじ込んだオモチャでした。最初は首藤さんも扱いに困ってギャグ要員として置いていたそうです。
ところが首藤さんは、最終回を迎える前に劇的な発想を思いつきました。それは、カジラこそ「モモの死を知った人びとの悲しみの涙の化身」だったのです。このスポンサーの無理難題も見事に物語に落とし込む才覚、素晴らしいのひと言に尽きるでしょう。
こうして『ミンキーモモ』の2度目の最終回は大団円に終わります。しかし、やはり実質的な最終回は第46話だったのかもしれません。
余談ですが後年、首藤さんは打ち切りがなかった場合の最終回について語ったことがあります。それは悪夢との戦いでモモが傷ついて千年の眠りにつくのですが、その夢の中でフェナリナーサが下りてくるというものでした。
結果的に実際の放映と大きく違うのはモモが赤ん坊に転生するか、深い眠りにつくかくらいだったということです。しかし、ショッキングな主人公の死という展開ゆえに、語り継がれるような作品になったことは、ある意味では良かったのかもしれません。「転生もの」が増えた昨今では、深い眠りにつくより赤ん坊として生まれ変わった方がソフトだと考えられるからです。
(加々美利治)