マグミクス | manga * anime * game

専門家が太鼓判、『ドラえもん のび太の恐竜』は古生物学の進歩が分かる本格恐竜映画

旧新作を見比べると「学問の進化」が見えてくる

 ちなみに、旧新作の恐竜の歯の違いについては、ドラえもんが「桃太郎印のきびだんご」を使ってティラノサウルスを手懐けるシーンをぜひチェックしてみてください。

 興奮が落ち着いたティラノサウルスが口を閉じているシーンで、リメイク版では歯がまったく見えません。ただし、完全に口が閉じているかどうか微妙なシーンでは歯が見えています。「桃太郎印のきびだんご」により穏やかになったことをマンガ的に表現しただけかもしれませんが、きちんとくちびるを意識して描いた可能性もあります。

 最後に「恐竜映画」としての本作の魅力について、大渕さんに聞きました。

「大長編ドラえもんに必ず出てくる主要な新キャラクターがいます。これが『のび太の恐竜』ではフタバスズキリュウのピー助です。フタバスズキリュウは恐竜ではなくて首長竜なので、厳密に言えば『のび太の首長竜』なのかもしれないのですが、それはさておき、このフタバスズキリュウは日本で初めて発見された首長竜です。

 しかも、発見者は当時高校生だった、鈴木直くんです。そういった、恐竜や古生物のサイエンスにつながるような、漫画をきっかけに現実のサイエンスをもっと知りたくなるような仕掛けやワクワクがたくさん盛り込まれていたと思います。『のび太の恐竜』を子どもの頃に読んで以降、大長編ドラえもんシリーズはいつも祖母に買ってもらっていた記憶があります。私のサイエンスへの好奇心をくすぐってくれた、きっかけのひとつであることは間違いないです。
 
 アニメや映画は、もちろんフィクションですから、必ずしも実際の生態にすべてを描く必要ありません。でも、『ドラえもん のび太の恐竜』はフィクションアニメとしての魅力は残しつつ、最新の学説に合わせて恐竜の描き方を変えていて、動物の専門家から見てもなるほどと思うことが多いです。作者の取材力、探究力、そこからの表現力、フィクションとノンフィクションの混ぜ合わせ方に感服します」

 みなさんも、恐竜の描かれ方の変化に注目して、旧新作を見比べてみてはいかがでしょうか。「学問の進歩」を感じることができるかもしれません。

(マグミクス編集部)

【主な参考文献】
青木良輔『ワニと龍 恐竜になれなかった動物の話』(平凡社)
小畠郁生ほか『恐竜学』(東京大学出版)
藤子・F・不二雄『大長編ドラえもん1 のび太の恐竜』(小学館てんとう虫コミックス)

大渕希郷(おおぶち・まさと)
どうぶつ科学コミュニケーター

1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。著書に「絶滅危機動物」「爬虫類・両生類」(いずれも学研ポケット図鑑)、「絶滅危惧種 救出裁判ファイル」「動物進化ミステリーファイル」(いずれも実業之日本社)など。愛称はぶっちー。公式ホームページ(http://www.sky.sannet.ne.jp/masato-oh/)

新作と旧作でこんなに違う、恐竜の描かれ方

画像ギャラリー

1 2 3