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『ドラクエII』で「3人ともレベル1」から冒険開始するとどうなるのか?

1987年にファミコンで発売された後、MSX、スーパーファミコン、ゲームボーイ、スマートフォンと移植された名作RPG『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』は勇者ロトの子孫による大神官ハーゴン討伐の物語。『ドラクエII』発売日の節目に、本来のゲーム設計から外れて、「3人ともレベル1から冒険を始める」というこだわりプレイをしてみました。

『ドラゴンクエストII』のゲーム開始直後。パーティ3人全員が揃うまではすべての戦闘を「にげる」ので、道具屋の「ふくびきけん」を利用して資金を稼ぐ
『ドラゴンクエストII』のゲーム開始直後。パーティ3人全員が揃うまではすべての戦闘を「にげる」ので、道具屋の「ふくびきけん」を利用して資金を稼ぐ

 1986年の第一作発売後、現在でもRPGの代名詞的な作品として遊ばれている「ドラゴンクエスト」シリーズのなかでも、ファミコン世代の方にとって思い出深い1本が『ドラゴンクエストII悪霊の神々』ではないでしょうか。勇者ロトの血を引く主人公が旅をするなかで、同じロトの子孫ふたりを仲間に加え、世界を破滅させようとする大神官ハーゴンを討伐する……という物語です。

 2023年1月26日に『ドラクエII』発売から36年を迎えたのを機に、本来のゲーム設計から外れて、3人の仲間全員が「レベル1」で集結する状態を作ってからプレイを試みました。

 久しぶりにファミコン版を遊ぶので、RPGらしく「登場人物の視点」で、プレイしてみます。キャラクター名は小説版主人公名である、アレン(あれん)としました。「主人公名を入力して、セレクトボタンとスタートボタンを押しながら、終わりを選ぶ」と、サマルトリアの王子と、ムーンブルクの王女の名前を入力できます。

 サマルトリアはゲームブック版に準拠して「カイン(かいん)」、ムーンブルクは小説に準拠して「セリア(せりあ)」としました。小説版のサマルトリア王子は「コナン」ですが、わがままな性格なので、気さくな性格のゲームブック版から名前をもらいました。

 ゲームが始まると、同盟国ムーンブルクの傷ついた兵士が現れ「ローレシアの王様! 大神官ハーゴンの軍団が、我がムーンブルクのお城を! 大神官ハーゴンは、禍々しい神を呼び出し、世界を破滅させる気です! 王様、なにとぞ、ご対策を……!」と、息絶えます。

 父親のローレシア王が「王子アレンよ、話は聞いたな? そなたもまた、勇者ロトの血を引きしもの。その力を試される時が来たのだ! 旅立つ覚悟ができたなら、わしについてまいれっ」と、主人公の王子アレン(俺)に呼びかけました。

 以下、脳内ストーリーをまじえつつゲームを進めます。偏見だらけなので、小説ファンの方には、あらかじめお詫びしておきます。

* * *

 旅立つ覚悟も何も、俺はレベル1で剣すら持っていないんだが……と思いつつ、父についていくと兵士が息絶えたばかりなのに、もう宝箱が用意されていて「さぁ、その宝箱を開け、旅の支度を整えるがよい」と言う。中には「どうのつるぎ」と、50ゴールドが入っている。

 100年前に竜王を討伐したご先祖様は、血縁でもない王様から120ゴールドを渡されたというのに、実の息子にたった50ゴールド……。俺は軽んじられていると思う。

 そんな想いを無視して父は「サマルトリア、ムーンブルクには、同じロトの血を分けた仲間がいるはず。その者たちと力を合わせ、邪悪なる者を滅ぼしてまいれ!」とおっしゃる。

 脇の兵士は「私も王子についてゆきたい! しかし、私には王様をお守りする役目が……」と言って、同行してくれない。父はムーンブルクを滅ぼした強敵の討伐を命じつつ、護衛もつけてくれないの。途方に暮れて、城内の女性に話しかけると「王子、行ってしまわれるのですね。わたしは、切のうございます」と言われる。

 まさか告白でもなかろうから、この女性は「王子にも関わらず、裸同然で城から放り出される」俺の運命に涙しているのだろう。父から手が回されているのか、城下の宿屋は「一泊4ゴールド」。世界を救う苦難の旅に出る自国の王子から、お金を取るとは……。

 途方に暮れて道具屋に行き、生きのびるために「やくそう」を買うと、買ってくれたお礼にと「ふくびきけん」をくれる。売るといくらと聞くと、53ゴールドと言う。俺は、剣と鎧を売り払うと、一番安い8ゴールドの毒消し草を大量に買い、「買ってくれたお礼」を強要した。

 道具屋の店主は、俺に同情したのか、大量の「ふくびきけん」をつけてくれ、それを売り払って、30分で1200ゴールドを確保した。実質、同情で援助されたということだろう。

 身軽になった俺は、リリザの町を目指す。道中、魔物が出たが、武具がないので逃げまくる。魔法も使えない俺が、まともに戦えるわけがない。せめてもうひとり仲間がいなければ、俺は戦わんぞ。リリザの町の武器屋で「くさりかたびら」「かわのたて」を購入し、ローレシア大陸最強防具を整えてから、美しい王女がいるというムーンブルクを目指す。

 ローラの門と呼ばれる祠(ほこら)から、攻撃を受けたというムーンブルクに向かおうとすると「1人では危険です!」と兵士が行く手を阻む。この兵士の反応が「常識的」というものだろう。父王はよく聞いていただきたい。仕方なくサマルトリアの城に向かう。ここまでは半分くらい敵から逃げそこなうが、優秀な防具のおかげで致命傷は免れる。

 サマルトリア王は「わしの息子カインは、すでに旅立ち、今頃は勇者の泉のはず」という。ロトの子孫は旅立ちの前に、勇者の泉に行かねばならないようだ。色々あってカインが仲間になったとき、彼のレベルは1だった。つまり、勇者の泉に行き、リリザの町に戻るまで、全て逃げ続けたのだ。あんな貧弱な装備で……。

 カインに事情を聞くと「父王に『ローレシア、ムーンブルクには、同じロトの血を分けた仲間がいるはず。その者たちと力を合わせ、邪悪なる者を滅ぼしてまいれ!』と、命じられたのです。僕のような弱者がひとりで戦うなど論外! せめて、僕たち3人が揃ってからが真の冒険というものでしょう」と力説された。

 カインも父王から不条理な目に合わされていたのかと、急に親近感が湧く。この瞬間、俺たちは親友となった。そういえば「旅立ちの前に、勇者の泉で祝福を受けるのがロトの子孫の習わし」とも言われていたな。王族の習わしである以上、ムーンブルクの王女も旅立ちの前に、勇者の泉で祝福を受けるべきだろう。俺はカインと「俺たちは決して戦わない! 王女を見つけるまでは」と固く握手を交わした。

* * *

 ……そんな脳内ストーリーを描きながら、「3人のロトの子孫がそろってから冒険を始める」ことにしました。つまり「全員レベル1、経験値0でふたりを仲間にする」ということです。

 ムーンブルクの王女を仲間にするまでにボス戦はないので、「全ての戦闘から逃げる」ことで3人をそろえることが可能です。「にげる」は失敗することもあるので、防具だけでも最強にしないと大陸を歩けないため、毒消し草を買い、一定確率でもらえる「ふくびきけん」を売る裏ワザでお金を稼ぎました。

 ひたすら敵から逃げつつ、リリザの町でサマルトリアの王子カインを仲間とします。彼は「こんぼう」と「かわのよろい」を装備していました。一国の王子なのにボストロールかよ……。

 さっそく、全てを剥ぎ取って売り払い「くさりかたびら」「かわのたて」で防御を固めます。ローラの門の兵士は「どうぞお通りください」と、武器も持っていないレベル1の王子たちを通してくれました。

 海底通路を抜け、ムーンペタの町まで逃げ続けます。防具を固めても、ギラの呪文で攻撃してくるリザードフライや、圧倒的な攻撃力のあるマンドリルから逃げられなければ一巻の終わりでしたが、薬草とホイミの助けで何とか到着できました。町では変な犬に懐かれましたが、王女はいません。

 廃墟になったムーンブルクの城に行くと、無念の魂と生き残った兵士から「王女は犬にされた」「呪いを解くラーのかがみが毒の沼地にある」との情報を得られます(聞かなくてもラーのかがみは見つけられますが、ロールプレイです)。毒の沼地まで逃げ続け、ラーのかがみを手にすると、マンドリルと遭遇。逃げ損ねたとたん、2撃でアレン王子が昇天。カイン王子もすぐに後を追いました。

 しかし、ムーンペタまで一瞬で戻れたので、もはや全滅も「お金が半分になるルーラ」だと思うことにします。カインを生き返らせ、ラーの鏡を犬に使うと、ムーンブルクの王女に戻りました。

3人のロトの子孫が「レベル1」で揃った状態。ここから本来の冒険を始めることに
3人のロトの子孫が「レベル1」で揃った状態。ここから本来の冒険を始めることに

 これで、3人のロトの子孫が一緒に「レベル1」から冒険を始める状態になりました。

 セリア王女は「ひのきのぼう」「ぬののふく」という貧弱な装備でした。野犬が人間に戻ったなら、はだ……いや、何でもないです。なんであれ、可能な限りロトの王族に相応しい装備をすべきです。

 復活した王女が最初に見せられたのは、アレン王子が全ての装備を売り払って裸となり、毒消し草を大人買いして、「ふくびきけん」を出せとムーンペタの道具屋に圧力をかける姿でした。これでも同行してくれるのは、本当に心が広い王女だと思います。

 5000ゴールドほど「援助」してもらい、「はがねのつるぎ」「はがねのよろい」「はがねのたて」を入手。カインも「てつのやり」を手に入れます(これがサマルトリア王子最強の武器である点が、ファミコン版の悲しいところです)。

 セリア王女にも、リリザの町で買った「せいなるナイフ」を渡すと「ロトの子孫が勇者の泉で祝福を受けてから、冒険を始める」ために、勇者の泉まで逃げ続けました。

 面白いのが、全員がレベル1だと、ローレシア王子のHPが「28」、サマルトリア王子が「31」、ムーンブルク王女が「32」なので、王女のHPが一番高いことです(普通に遊ぶとローレシアの王子が10レベルくらいあるので、こうはなりません)。

 泉の老人から祝福を受けると、ついに戦闘解禁! レベル1とはいえ「はがねのつるぎ」「てつのやり」を持つ王子たちの攻撃力は高く、どちらも一撃でモンスターを葬ります。「いらない子」扱いされがちなサマルトリアの王子なのに、強ぇ! めちゃ爽快! 王女もせいなるナイフで活躍します。

 仲間がそろったので「ぎんのカギ」があるという「湖の洞窟」を目指します。本来ふたりで行く場所なので、ガチ装備かつ3人で行けば、レベル上げなど一切不要。すべての敵を葬って、サクサク進めます。本来は結構苦戦する場所なので、3人そろうまで我慢したかいがありました(毒だけは怖いので「どくけしそう」は必要でした)。

「ぎんのカギ」を手に入れ、サマルトリア城に戻ると、カイン王子の妹は「わたしも連れてってよぉ」とねだるが、カインが「ダメだよ、お前は」と断ります。「お前なにしてくれてんだ。どう考えても、妹もロトの血を引いているだろ。断るんじゃねぇ」と思う場面です。今後のリメイク版では、ぜひ仲間にさせてください(懇願)。

 早速手に入れた鍵でローレシア城内の扉を開けると「アレンはまだ子どもなのに。辛くなったらいつでも帰ってきていいのですよ」という女性が。筆者の脳内ストーリーが歪んでいるので「父王は身分の低い母を、銀の扉に幽閉し、その息子である俺を使い捨てにしようとしている。だから50ゴールドとか、冷遇しているのだな!」と理解しました。

「ハーゴンを倒したら、貴様の玉座を奪ってやる! いつか見ていろ、ダブスタクソ親父!」(?)と思いつつ、ローラの門に戻り、再びムーンブルクを目指しました。レベルはアレンが7、カインも7、セリアが4。

 ムーンペタ周辺からは3人パーティが前提なので「記憶にあるドラクエII」に戻りましたが、久しぶりに楽しい「ロールプレイ」と「ゲーム体験」ができた時間でした。

(安藤昌季)

【画像】シンプルな作戦で実現!『ドラクエII』で「3人ともレベル1」が揃うまで(13枚)

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