『閃光のハサウェイ』の宇宙作戦は『エヴァ』を超えるか? 注目の「空中受領」シーン
リアリティある描写のなか、突然の「ムチャぶり」
ひとつ目の注目点は、機体を格納する「カーゴ・ピサ」のデザインです。映画では、JAXAの宇宙ステーション補給機「こうのとり」そっくりのカプセルとして描かれました。巨大な円筒形で、後部にエンジンがついています。また、ガスをシュッと噴き出して姿勢を制御する様子も忠実に再現。このカーゴの描写ひとつとっても、作中世界が現実と地続きになっていると感じさせるのがすごいところです。
ふたつ目は「音」です。ハサウェイの同僚・エメラルダが、モビルスーツ「メッサー」に乗り込んでカーゴを捕まえます。このシーン、なんといっても音がリアル。ヘルメット内にこもる荒い息づかいや、鳴り響くアラート音。観客はあたかもエメラルダになったかのような緊張状態を体験します。
もちろん、本作はただリアリズムを突き詰めたわけではありません。現実から思いっきり飛躍させたフィクションも描かれます。3つ目の注目点は、大気圏突入時のアクションです。カーゴ内のガンダムに搭乗したハサウェイは、衛星軌道から大気圏へただ落下するのではなく、落下しながら戦うというムチャをやります。
カーゴは敵の攻撃を受け、軌道の制御がきかなくなります。ほぼ垂直に降下していきなり分厚い大気を突っ切ってしまいますが、これはきわめて危険な状態なのです。カーゴが月から来たのであれば時速約4万kmで大気圏に突入しているはずで、本来なら徐々に減速しなければなりません。しかし、ハサウェイのカーゴは大きな空気抵抗で急減速していて、機械やパイロットへ負荷がかかりすぎているのです。
実は『エヴァQ』のアスカも同じようなピンチに直面し、「降下角度が維持できない! このままじゃ機体が分解する!」と焦っていました。かたやハサウェイは、脳裏によぎったアムロの声に奮起してガンダムをカーゴから発進させます。
「おいおい、そりゃいくらなんでも無謀だ。大丈夫か……?」というツッコミが筆者に思い浮かんだのは、何度も映画を見返してからでした。初見のときは、スピーディな展開で細かいことに気づく余裕は全くなく、ただただ「ハサウェイかっけぇ!」と映像に圧倒されていました。これは、フィクションを支えるリアルの描写が強固だったおかげだと思います。しかも今回紹介した宇宙作戦シーンに限らず、映画の最初から最後まで、徹底的に作り込まれた世界がずっと続くのです。
そんな驚異的な作品『閃光のハサウェイ』、2月5日の最終回までお見逃しなく。今回「エヴァを超えるか?」と題して記事を執筆しましたが、「どちらもすごい!傑作!」というのが正直な感想。今作は三部作の一作目なので、物語はまだ始まったばかり。続編の公開も楽しみに待ちたいと思います。
(ツヤマユウスケ)