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アケコンを発売するタニタ社長の”ゲーム愛” 大手参入がゲーム産業に与える影響とは

大手企業が相次いでゲーム関連企業やeスポーツに参入するなか、体重計などの健康器具大手タニタが、ゲーム専用のコントローラー「ツインステイック」の増産を発表しました。

"あのタニタ"がゲーム専用コントローラーを開発

 体重計などの健康器具大手、株式会社タニタ(東京都板橋区)がゲーム専用のコントローラー「ツインステイック」の増産を発表しました。

 このプロジェクトは、かねてよりゲーマーであることを公言している株式会社タニタの代表取締役、谷田千里さんの”鶴の一声”で開発がスタートしたもの。谷田さんはセガの主力タイトル『電脳戦機バーチャロンシリーズ』の大ファンで、「ぜひ私に作らせてほしい」とセガに直談判したそうです。

 クラウンドファンディングではじまったこのプロジェクト。2018年10月18日から資金を募ると、開始から約11時間後に資金調達を達成。多くのリクエストに応える形で、この度の増産が決定しました。製造には、タニタと同じ板橋区に本社を置くメーカーである三和電子とトラスティーが協力しています。

タニタの情熱により誕生した「ツインスティック」(画像:タニタ)
タニタの情熱により誕生した「ツインスティック」(画像:タニタ)

『電脳戦機バーチャロン』は、株式会社セガが1995年に発売したゲームで、バーチャロイドと呼ばれるロボットを操作する対戦格闘ゲームです。それまでのロボットゲームになかったスピード感が魅力のひとつで、熱心なファン「チャロナー」から支持され、発売から24年たった今でも愛されているゲームです。

 健康とゲーム。ひと昔までは相反するものと見られていたこの2つを結びつけたタニタの新事業と、ゲームへの情熱について谷田千里社長に聞きました。

ーーこれまでどんなゲームをプレイしてきたのでしょうか?

 最初にゲームに触れたのは、タイトルは忘れてしまいましたが子供のころでした。よく遊んだお気に入りのゲームは、『ドラゴンクエスト』(スクウェア・エニックス)、『ときめきメモリアル』(コナミ)、『デッド オア アライブ』(コーエーテクモ)、そして、『バーチャロン』です。

目指したのは、新しいものづくり

ーーゲーム産業への参入はどういった経緯なのでしょうか?

 もちろん私自身が『バーチャロン』好きということもありますが、それ以上に、新しい「ものづくり」の手法を社内外へ発信したいという狙いがありました。新しい商品をつくるには、資金調達や人材確保、販路開拓が課題となります。また、日本には優れた技術を持つ人材や企業が多数あり、同時にこれまでにない商品を求める潜在的なニーズがあります。

 今回のプロジェクトは、クラウドファンディングを活用することで、会社組織の枠組みだけによらない形で、これらを結びつけることで、課題を解決していこうというものです。弊社にとって新たな事業領域へのチャレンジとなりましたが、セガゲームスさんをはじめ、三和電子さんやトラスティーさんの協力を得られたことで、推進していくことができました。

ーー社内からはどのような反応がありましたか?

 プロジェクトがスタートしたばかりの頃は「なぜタニタがゲームのコントローラーをつくるのか?」という声が社内からあがっていました。しかし、多くのお客様にご支援いただき、クラウドファンディングが成立したことから、「潜在的なニーズをくみ取り、これまでにないやり方で商品化してお客様にお届けする」というこのプロジェクトの意義を感じてもらえたのではないかと思っています。こうした取り組みが、弊社内はもちろん、社外でも広がっていけば、日本のものづくりを元気にしていけるのではないかと期待しています。

ーーコントローラーを制作するうえで、苦労したことや気をつけたポイントはありますか?

『バーチャロン』の原点はアーケードですから、アーケード筐体の操作性を完全再現することにこだわっています。現在、同シリーズの生みの親であるセガゲームスの亙重郎プロデューサーの監修を受けながら、開発に取り組んでいます。

 本プロジェクトの過程で、セガゲームスさんが『電脳戦機バーチャロン』『電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム ver.5.66』『電脳戦機バーチャロン フォース』の発売を決定し、本ツインスティックに対応することを発表してくださいました。どの作品でも違和感なく遊べるスティック形状、ボタン配置とするため、何パターンも図面を書き、試作を繰り返しています。

ーーこの度の増産は、予想外の反響ですか?

 前回のクラウドファンディングが1000台限定だったことから、「間に合わなかった」という声を多くいただきました。これに何とかお応えしたいとの思いから取り組んだのが、今回の「増産を目指すクラウドファンディング」でしたので、成立した時には正直ホッとしました。『バーチャロン』の人気は根強いですね。

「『ドラゴンクエスト』で名前を「おおおお」にして、王様に「おお おおおおよ」と言わせて楽しんでいました」と語る谷田千里社長(画像:タニタ)
「『ドラゴンクエスト』で名前を「おおおお」にして、王様に「おお おおおおよ」と言わせて楽しんでいました」と語る谷田千里社長(画像:タニタ)

ーー谷田千里さんにとって、ゲームとはどのような存在でしょうか?

 ゲームは、心の健康づくりに役立つと考えています。また、楽しみながら健康づくりに取り組める入口にできるともみています。タニタでは、ピンボールゲームと体組成計を融合した「TANITA PINBALL」のコンセプトモデルを開発し、今年1月に米国・ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES2019」で公開しました。体験されたお客様の反応は非常によく、この分野の可能性を感じました。今後も、ゲームをはじめとしたアミューズメント分野と連携した新しい健康づくりの手法を探っていきたいと考えています。

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 eスポーツの隆盛を背景に、最近ではサプリメントメーカーのわかさ生活や洋菓子メーカーの不二家といった大手企業があいついでeスポーツのスポンサーになっています。ゲームが心身の健康に与える影響についてはさまざまな議論がなされていますが、その一方で、私たちの生活に身近な企業とゲーム業界の接点が増えれば増えるほど、普段ゲームに馴染みのない人びとがゲーム業界の動きに目を向ける機会も多くなります。
 
 タニタの「ツインスティック」の試みは、これまで接点のなかったゲームファン層の熱い支持を獲得することに成功したといえるでしょう。eスポーツやゲーム業界への企業参入は、単に市場を大きくするだけでなく、世の中のゲームに対するイメージにも大きな影響を与えていくことになりそうです。

(マグミクス編集部)