伝説の昭和特撮「シルバー仮面」に続編があった! 実相寺監督が執念を込めた遺作
昭和特撮の伝説となった『シルバー仮面』には続編が作られていました。しかも、初代『ウルトラマン』などを手掛けた実相寺昭雄監督の遺作で、舞台は戦前の浅草。ヒトラーまで登場するというその内容は……?
方針変更で「幻のヒーロー」となった『シルバー仮面』
昭和時代には、ウルトラシリーズのブレイクに伴い多数のヒーローが登場しましたが、そのなかでも伝説級の作品のひとつが『シルバー仮面』(1971)です。等身大の変身ヒーローで、兄弟が協力するドラマ性も、視聴者を魅了しました。主役を演じたのが柴俊夫、兄弟として篠田三郎も参加、制作した日本現代企画はその後、『アイアンキング』(1972)や『レッドバロン』(1973)などの傑作を生み出します。シリーズ構成および1話~2話を担当したのが『ウルトラセブン』の傑作エピソードで知られる実相寺昭雄監督であることからも、特撮ファンには注目の作品と言えるでしょう。
しかし放送当時は、裏番組の『ミラーマン』に押されて苦戦し、方針変更を余儀なくされました。再放送の回数が少なかったため、今では「幻のヒーロー」として扱われることも少なくありません。
しかし、この幻のヒーロー番組には、続編が存在しています。それが今回紹介する『シルバー假面』(2006)です。
主人公は文豪の娘 そしてヒトラーも出演?
2006年の『シルバー假面』は、同じく実相寺昭雄監督の手によるものですが、もとの『シルバー仮面』とはまったく異なるストーリーになっています。
まず、舞台となるのは1920年(大正9年)の帝都、東京です。そして、主役「シルバー假面」は女性、それも『舞姫』で描かれた悲恋、文豪・森鴎外とドイツ人女性エリスの間に生まれた美女ザビーネ(演じるのはニーナ/内田仁菜)です。
彼女は地球を覆う磁場、ミッドガルドを守るため、ニーベルンゲンの指輪がもたらす「銀の力」でシルバー假面に変身するのです。
敵は時空を越え、巨大な怪飛行船をあやつる怪人、カリガリ博士です。博士はクモ型宇宙人、 コウモリ怪人、鋼鉄ロボット・マリアらを操り、謎の美女殺人事件を引き起こします。これはすべて、ザビーネの持つニーベルンゲンの指輪を狙った陰謀だったのです。
カリガリ博士をはじめ、登場する奇怪な敵、そして舞台となる帝都浅草は、実相寺昭雄監督の演出により、万華鏡のようにきらびやかな画像となって描かれます。
この奇想天外な物語は大正時代の日本とドイツをまたにかけ、オカルトと国際陰謀の渾然一体としたものになっていきます。そして、ナチスを結成する前のアドルフ・ヒットラーが、魔術結社の一員として登場するのです。なんという展開でしょう!
『シルバー假面』三部作を完成させた直後、実相寺昭雄監督は胃がんにより逝去、この作品が遺作となりました。がんを押しての製作で、初号試写を見届けての急逝、初代『シルバー仮面』での悔しさを挽回するべく、最後の執念の一作となりました。ウルトラシリーズで数々の伝説を残した実相寺監督の遺作、ぜひ一度見ていただきたいです。
(マグミクス編集部)