“雪ミク”が示唆する新しい地域おこし 長年愛される「さっぽろ雪祭り」の人気支える存在に
「札幌雪まつり」にボーカロイド「初音ミク」の雪像を初めて作ったのが2010(平成22)年。それから10年近く経ち、初音ミクは札幌全体を盛り上げる存在へと成長を遂げました。
今年で10周年を迎える「雪ミク」
先月、北海道札幌市で開催された「さっぽろ雪まつり」に、今年も初音ミクの雪像が登場しました。例年、会場に集った多くの観光客を楽しませる初音ミクの雪像ですが、2019年はプロジェクションマッピングによる光と音のパフォーマンスも行われ、来場者の視線を釘づけにしました。
「初音ミク」は、クリンプトン・フューチャー・メディア株式会社が2007(平成19)年に発売したDTM(デスクトップ・ミュージック)用のソフトウェア音源です。
青緑の髪色にツインテールという特徴的な外見の、ソフトウェアを擬人化したキャラクターが音楽やイラストなど多くの二次創作の題材となり、ニコニコ動画などのサイトでさかんに投稿されるようになりました。発売以降、国内外で絶大な人気を誇っています。

約70年の歴史を持つさっぽろ雪まつりは、毎年200万人もの観光客でにぎわい、世界三大雪まつりのひとつとして有名です。会場内には、いくつもの美しい雪像が並び、陸上自衛隊も雪像の制作に協力しています。
冬の風物詩とも言うべき、さっぽろ雪まつりですが、2010(平成22)年に初音ミクの雪像が展示されたことで、大きな注目を集めました。この雪像の可愛らしい姿は、ネット上で話題となり、以降毎年さっぽろ雪まつりで制作されています。
初音ミクの雪像をきっかけに、「冬の北海道を応援する」ことをコンセプトとした「雪ミク」が誕生しました。雪ミクは、毎年テーマに沿った異なるコスチュームを着た初音ミクで、北海道を元気にするキャラクターとして企業とのコラボレーションやイベントを積極的に行っています。
コスチュームのデザインは毎年公募されており、国内から応募が殺到しているといいます。2019年はプリンセスをテーマにした、アニバーサリーにふさわしい壮麗なコスチュームが選ばれました。
ネット発信で、地域を盛り上げる
具体的な事例として、札幌市内を走る路面電車を運行する札幌市電では、2011(平成23)年から「雪ミク電車」というコラボレーションを実施。今年の「雪ミク電車2019」では、車両を可愛らしい雪ミクのイラストで飾り、特別アナウンス音声や、車内広告でイラスト展示なども行われました。
また2010(平成22)年からは「SNOW MIKU」という雪ミクが主役のフェスティバルも催されています。2019年は、プロ野球球団の日本ハムファイターズや自動車大手企業のダイハツ、セガゲームスの配信するスマホゲーム『ぷよぷよ!!クエスト』といった、ジャンルを問わない幅広いコラボレーションが展開されています。

初音ミクを手がけたクリンプトン・フューチャー・メディア株式会社は、本拠を北海道に置いているということもあり、北海道を盛り上げる企画を初音ミクとともに精力的に打ち出してきました。
それは、今では単なる一企業の催すイベントの枠にとどまらず、地域全体が一丸となって推し進める大きな観光産業に成長しています。年ごとに「雪ミク」のデザインを刷新し、プロジェクションマッピングなどの最先端技術を取り入れるなど、新たな試みに挑戦し続けていることが「雪ミク」の根強い人気の秘訣であり、70年近く開催されてなお、さっぽろ雪まつりに毎回多くの来場者が集まる要因のひとつと考えられます。
2017年には、過去最多となる273万人を超える来場を記録したさっぽろ雪まつり。ネット発のキャラクターが地域おこしの新しい姿を担っていくことを示唆しているといえます。同時にそれは、一つの「伝統」から抜け出し、つねに新しい魅力を創り出し続ける祭りのあり方を、国内外のファンや、地域おこしに関わる人びとに見せています。
(マグミクス編集部)