【漫画】「人喰い」少年と「人の生気を奪う」少女が出会ったら? ふたりの結末に「涙腺崩壊」
人を食べたくなってしまう「人喰い病」が発症し、逃げるように引っ越してきた少年。食欲を抑えるために人と関わらないように暮らしていましたが、隣人の少女と話をするようになって……。作者のめめっぽさんにお話を聞きました。
触れたいのに触れられない距離感が「もどかしくて切ない」
人を食糧にしないと生きていけない「人喰い病」を患った少年・ノワールは、「生きていてほしい」という母の願いから、逃げるように見知らぬ土地に引っ越しました。真新しい庭で散歩をしていると、隣の家から女の子の声が聞こえてきて……。
めめっぽさん(@memeppooo)が「人を喰べる少年と生き物に触れない少女の話」として公開した創作マンガ『人喰い少年と触れられない少女』がTwitter上で公開されました。いいね数は3.2万を超えており、読者からは「美しいお話だった」「涙腺崩壊した」「『触れられない』ではなく『触れない』という優しさが沁みる」などの声があがっています。
作者のめめっぽさんにお話を聞きました。
ーーめめっぽさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。
記憶にないくらい物心ついたときから、絵を描くことが好きでした。学生のときに出会った好きなゲームで、幸せになりきれなかったキャラクターがいて、悲しかった自分の心を安らがせるためにそのキャラクターの心情を想像したマンガを描きました。そこで初めて、マンガでは1枚絵とはまた違って、こんな深い心情、命、魂まで紙に載せられるのかと思い、楽しくてたまらなくなり、何年も好きなキャラクターたちの心情を想像し続けました。
ーー『人喰い少年と触れられない少女』のお話が生まれたきっかけは何ですか?
懐の深い人たちがたくさん出る作品に出会って感銘を受けたり、仕事で次のステップに進みたくて道を模索している最中にマンガ関係の方と話す機会があったりと、いろんなタイミングが重なったことです。絵は趣味だったのですが、腰を据えて一度頑張ってみようという意思を固めました。
もともと世の中の物語から感動を受け取り、心情を考え続けることはいつも続けていましたが、素敵な刺激をもらったのだから、そろそろ自分も心に溜めたものを1から出す側になりたいと思うようになりました。
ーーふたりのつらい境遇と優しい世界観という正反対な設定が、より切なさを引き立てる作品です。この作品を描くうえで特に意識した点はありますか?
描いている私が、主役ふたりの味方でいるとともに、誰の敵にもならないことです。また、作品内で「正しい」「正しくない」を裁かないことです。私自身、他人と同じようにできなかったり、自分は変わっているのではと感じたりしたことがあって、「当たり前」「正しい」を苦しく感じることが何度かありました。でも、これは私だけじゃなくて、人間全員違うのだから誰しも少なからず持っている気持ちだと思い、そういったものをすくいあげる話にできればと思いました。
だから「普通」という言葉は作中で使いませんでした。そしてキャラクターも「絶対的に正しい人」は作らないようにしました。この作品の世界の柵の外には、主人公たちと敵対する考えを持ったキャラクターも山ほどいると思いますが、その人たちも等しく「正しくて、間違ってもいる」ということは大切にしたいと思います。
ーー多くの読者が「感動した」とコメントしています。そんななかでも、特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。
母親の方からの「子供たちと大事な人を抱きしめようと思った」というお言葉です。作中の母は世間的には違法な人で、どう映るか緊張していたので、母親の方からの温かいお言葉がうれしかったです。
また、「この人たちの人生は、マンガの登場人物という言葉で収めるには窮屈すぎる」というお言葉がうれしかったです。そのくらい紙の上の人たちに心を砕いていただけるのは、何よりキャラクターの「生」だと感じました。
ーー今後、発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?
自分も幸せな形でキャラクターたちと一緒にいたいです。紙の上のキャラクターは、形にせねば誰にも知られず、誰かに知られることで生きる命であって、そうして生きてくれることが一番うれしいです。マンガ雑誌を見て育ったため、そういった場所もとても素敵です。
しかしSNSが発達した現代は、個人でマンガを発表するための道もいくつかあるので、いろいろと視野に入れて描き続けられる道を探したいです。1枚絵を描くことも好きなので、マンガと同時に絵の活動も続けていけたらと思っています。とにかく、ひとりでも良いので、読んでもらえることが幸せです。
(マグミクス編集部)