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「嘘をつくのはもう嫌だ」 『正直不動産』が描く、会社員が取り戻すべき「正直さ」とは

ビジネスにおける「正直さ」とは

 皆さんは、不動産業者から次のような話を聞いたことはありませんか?「物件が400万円を超える場合、仲介手数料は『成約価格の3%+6万円+消費税』」と。嘘がつけなくなった永瀬は、3%は法律で決まった上限値であり、3%以下でも契約できることを客に告げてしまいます。

「そんな話は契約の時には聞いてない」と怒りをぶつける客。そのほかにも永瀬は、物件の秘密や事故物件の有無などを話してしまい、営業が成り立たなくなるはめに。「もうこの業界では生きていけない」と考える永瀬。しかし客は、永瀬の正直な態度に心を打たれ、「君を信頼する、これからも頼む」と契約を結ぶのでした。

 あくどければあくどいほど儲かるこの業界において、「正直者」であることがビジネスにどのような影響を及ぼすのかをこの作品は教えてくれるのです。詳しくは本編を読んでください。

「他人をだまさない人生」とは何か?

 そもそも「他人をだまさない人生」とは何なのでしょうか?

 不動産業界だけでなく、この社会に生きる人にとって、誰もが一度はこのようなことを考えるのではないでしょうか。『正直不動産』は永瀬を通じてその答えを読者に提供し、また、永瀬のライバルとなる人物を通して、客をだます手口も「正直」に見せてくれます。「嘘をつけなくなる」という小さなファンタジーを使うことで、事実をより際立たせている好例です。

 また、読みやすい絵柄や場面の切り取り、分かりやすいセリフ回しなどで、マンガをあまり読まない人でも理解できるようになっています。そのような作品の作り方も、嘘がつけなくなった永瀬のように、カスタマーサイドである読者のことを徹底的に考えた作品といえるでしょう。

『正直不動産』第1巻の表紙(画像:小学館)
『正直不動産』第1巻の表紙(画像:小学館)

 毎年5000冊以上のマンガを読んでいる私ですが、ここまで読者のことを考え、読者のためになりながらも、「あくまでもエンターテインメント」として楽しめるこの作品は、マンガ表現の到達点のひとつであると考えています。ビジネス書しか読まないそこのあなた、自信を持ってオススメします。

(マンガ評論家・漫画読太郎)

●漫画読太郎
マンガ評論家

東京都生まれ。1年間に読むマンガは5000冊以上で、強いジャンルは青年コミック全般。本業は大手企業の会社員で、「人間らしい、血の通った」レビューをモットーにしている。

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