【漫画】家族5人分ひとりで『料理は妻の仕事ですか?』しんどい、瀕死な妻の叫び
家族5人分の食事を毎日ひとりで作るのがつらい。もし自分に何かあった時、家族の食生活はどうなるんだろう……? イラストレーター・アベナオミさんによるコミックエッセイ『料理は妻の仕事ですか?』が発売されました。家族の「自炊力」を上げる方法とは?
「料理がしんどい」全ての人へ 家族みんなで関わるご飯作り!
朝ご飯を食べたばかりなのに、もう夕飯の心配をする……心当たりのある人も多いのではないでしょうか。家族の食事作りを毎日ひとりで背負う女性が、その苦しみを赤裸々につづるとともに、料理と家族のカタチを見つめ直すコミックエッセイ『料理は妻の仕事ですか?』が2023年1月19日に発売されました。
作者のイラストレーター・アベナオミさんは中1、小1、年少の3児の母。仕事をしながら、夫も含めて家族5人分の食事を毎日ひとりで作り、疲れ切っていました。夫は家事や子供の世話を積極的にしてくれるものの、なぜか料理だけはしてくれません。もし自分に何かあった時、家族の食生活はどうなるんだろう? アベさんは不安と危機感を募らせます。
そこでフードライター・白央篤司さんのアドバイスのもと、家族の「自炊力」を上げる挑戦が始まりました。そして同時にアベさんの料理に対する意識も変わっていくことになります。本書ではその過程がマンガとコラムで分かりやすくまとめられており、料理がラクになるヒントがたくさんもらえます。読後にはきっと「明日から実践してみよう」と思える1冊です。
作者のアベナオミさんに、お話を聞きました。
ーーアベナオミさんがイラストやマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。
小さな頃からお絵描きが大好きでした。小学校の頃は休み時間や放課後はずっとお絵描きばかりしているような子供でした。高校卒業後、日本ビジネススクール仙台校(現・日本デザイナー芸術学院)に進学。卒業後は地域情報誌のデザインの仕事をしながらイラストレーターとして活動をスタートしました。
しかし、イラストの仕事はなかなか軌道に乗らず……結婚出産を機に「もうイラストレーターは諦めよう」と思っていたさなか、東日本大震災で被災。震災当日は車で沿岸部に出社していた夫を迎えに行こうとして、危うく長男と津波に流されるところでした(夫は避難して無事でしたよ)。
被災生活中、長男と毎日のように、津波犠牲者の方をのせたヘリコプターが上空を飛び回るのを見上げていたんですが、「私もあのヘリコプターに乗っていたかもしれない。志半ばで亡くなった人びとの分も、自分はやりたかったことをやり遂げよう」と決心。イラストレーターとして出版社へ営業をして回ったりと活動を再開し、現在に至ります。
ーーコミックエッセイ『料理は妻の仕事ですか?』を手掛けることになった経緯について教えて下さい。
きっかけは担当編集さんからの「料理がしんどくないですか?」というひと言でした。本編にもありますが、アベの母は「ごくまれな超人タイプ」で、3食手作りなんて朝飯前、兼業農家4世代同居の9人家族のために料理をすごい品数作っていたんです。そしてその毎日の料理が「母からの愛情」だと思っていました。
それに比べたら半分以下の品数しか作らない、たまに外食、テイクアウトもしちゃうアベは「母に比べたら……楽をしている、家族に愛情を与えてない」と思っていたので、料理を「しんどい」と思っていいの!? とカルチャーショックを受けたんです。
令和を生きる私たちには、もう私たちの母親世代の「普通」なんてもう無理なんです。担当編集さんともうひとり料理が苦手なママさんを加えて、フードライターの白央篤司さんにアドバイスをいただきながら「料理がしんどい」をなくす本を作ろう! と立ち上がったのでした!
ーーお仕事をしながら毎日家族5人分の食事作りをひとりで背負い、つらかったお気持ちに共感しました。特につらかったのはどんなことでしょうか?
一番は買い物です。週2回の買い出しの時は、カートにカゴをふたつ。山のように商品を乗せながら、栄養バランス・好き嫌い・アレルギー・予算・献立など頭をフル回転させてスーパーのなかを歩き回ります。レジを通して、袋詰めして、車に乗せて……もうこの時点でヘトヘトです(笑)。
帰宅後も大量の品物を仕分けして、収納したり小分けにして冷凍したりしてから、夕飯を作り始めます。食べ始める頃にはもう瀕死でした……。
ーー『料理は妻の仕事ですか?』を描くうえで工夫なさった点、心がけた点などを教えて下さい。
ただ単に「夫にご飯を作ってもらえるようになるマンガ」にはしたくなかったのがポイントです。ただ作ってもらうのは、物理的には簡単です。ですが、まずは大変さを分かってほしかった。そして、女性だから、妻・母だから料理を好きでやっているということではないということを夫に知ってほしかったんです。
やる人が私しかいない、私が作らないと家族の健康が危うくなるかもしれない緊張感を共有したかったですね。夫はもちろんですが、息子たちにも「料理は妻の仕事」「料理は愛情表現」という先入観を持ってほしくなかったので、家族みんなで料理に関わることを重点的に描きあげました。
ーーアベさんご自身は以前と比べて、料理に対する意識はどのように変わりましたか?
白央篤司さんに「アベさんのお母様はごくまれにいる超人です。まねなんかしちゃダメですよ」と取材の時に言っていただいた時に、背中に乗っていた大きな十字架がホロリと落ちるような感覚を味わいました。母のように愛情込めて手作りをして、テーブルいっぱいにおかずを並べなければいけない、という思い込みが、スーッと消えて心が軽くなりました。
執筆が終わった現在は、週に一度は夕飯を作らない日を作ったり、ホットプレートで焼肉やお好み焼き、手巻き寿司など家族全員が料理に参加するメニューが増えたりしました。自分の体調に合わせて簡単な料理にしたり、気分の乗った日はじっくりコトコト手のかかる料理をしたりしています。今思えば以前は、毎日全力投球だったんですね。
ーー最後に、『料理は妻の仕事ですか?』の読者の方へ、ひと言メッセージをお願いします。
「料理がしんどい」「料理が苦手」なんて言ったらダメなんだと思いながら、毎日苦しい思いで料理をしている全ての人に届いてほしくて描きました。それぞれが背負っているものは違うと思いますが、少しでも本書を読んで肩の荷が軽くなってほしいな……と思います。食べることは生きている限り続きますが、料理とうまく付き合って健康的に楽しく生きていきましょう!
(マグミクス編集部)