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超高齢社会にゲームが道を示すか 「健康ゲーム指導士」とは

日本が抱える高齢化問題。そこにゲームを用いるという試みが近年行われています。介護施設内にカジノを設置した施設や、ゲームで脳の活性化を図るなど、それまでにはなかった役割が期待されています。

2040年、人口の3割強が65歳以上に

 日本国内の高齢者人口は増加の一途をたどり、2017年には90歳以上の高齢者が200万人を突破しました。総務省統計局の調査によれば、2040年には総人口の約3割強が65歳以上になる見通しです。

 また、厚生労働省の平成28年「介護サービス施設・事業所調査」によるとデイサービスといった介護老人福祉施設の数は、全国でおよそ7705件にのぼり、介護施設の需要がより高まってきているといえます。一方で、介護施設におけるレクリエーションなどのアクティビティのマンネリ化が業界内で指摘されていました。

介護施設のイメージ(画像:©kazoka30/123RF)
介護施設のイメージ(画像:©kazoka30/123RF)

 そうした声を受け、日本アクティビティ協会では、2018年より「健康ゲーム指導士」養成講座を開講しました。健康ゲーム指導士は、ゲームなどのデジタルアクティビティをシニア層に向けて指導するもの。ゲーム系専門学校の学生や介護の現場に従事する介護士などが受講しています。

 同団体では、諏訪東京理科大学・篠原菊紀教授の協力のもと、PlayStation 4用ソフトウェア『グランツーリスモSPORT』を使って、デジタルアクティビティ体験がシニアの脳に与える影響について調査。前頭葉機能の改善と、認知機能全般の改善を発見しました。以降さまざまな形で介護現場への導入をすすめています。

現場が抱える"マンネリ化"を打破するか

 こうしたゲームが脳に与える影響は、以前から注目されています。首都圏を中心に展開するデイサービス事業所「デイサービス ラスベガス」は、施設内に本格的なカジノを設置し注目を浴びています。

 「カジノ型介護施設」と呼ばれる同施設では、専用のゲーム用チップ「ベガス」を発行し、利用者の多くがゲームに参加しています。

 現状の介護施設でレクリエーションとして利用される囲碁や将棋と同様に、カジノをレクリエーションと捉え、施設内でのみ使用できるチップを用いるなど安全面も考慮されています。

 同施設を運営する日本エルダリーケアサービスの森薫さんは「勝ち負けで”うれしい””くやしい”といった感情が生まれますから、脳の刺激にもつながります」と話しています。森さんによれば、利用者のなかには、本場のカジノさながらにジャケットを着こなす人もいるといいます。

ゲームプレイのイメージ(画像:© scyther5/123RF)
ゲームプレイのイメージ(画像:© scyther5/123RF)

 ゲームが介護の現場において、今後どのような役割を担っていくのでしょうか。健康ゲーム指導士の養成を主導する、日本アクティビティ協会理事を務める川﨑陽一さんに話を聞きました。

ーー介護施設のレクリエーションとして、ゲームは相性がいいのでしょうか?

 介護業界は慢性的な人材不足のため、余暇の時間にまで手が回っておらず、レクリエーションのマンネリ化が起きています。よって、新しいアクティビティの提案を現場職員は待っています。その点においてテレビゲームは大きな期待を担っております。

 ただし、ゲーム機のセッティングやソフトの選択、機材自体の確保などの壁があり、導入が進んでおりませんでした。そこで、ゲーム業界の企業のお力もお借りし、健康ゲーム指導士という教育体系と機材の貸し出しの仕組みを作り、普及活動が始まりました。

ーーどのような効果が期待されますか?

 脳機能の活性化と男性参加率の向上があります。また、実施中や終了後に、ご家族といったまわりとの会話が圧倒的に増えます。つまり、ゲームは会話を促すコミュニケーションツールとして、とても有効です。

 私共は、ゲームを「みんなで、公共の場で」行うひとつのアクティビティとして捉えております。ゲームの強みは、みんな楽しめ、会話が増え、外出するきっかけになっています。そして、世代を超えて、交流できることが最大の強みで、若い子や子供が高齢者に教えたり、一緒に楽しむこともできます。

 ゲームは、人と人、人と社会を繋ぐ、有効なコミュンケーションツールと考えております。
 
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 従来の介護施設のレクリエーションと言えば、折り紙や手芸といった女性が好むものが多かったといいます。ゲームのレクリエーションを導入したことで、男性の利用が増加することが期待されています。

 上記のカジノ型介護施設「デイサービス ベガス」も、そういった男性のニーズを狙ったものです。その点について、川﨑さんは「つまり全く新しいアクティビティ・男性が好むプログラム・職員が自分の趣味特技を生かせるという点で、現場では積極的に導入が進んでおります」と分析しています。

 現在、健康ゲーム指導士は約100名を超える人が習得しています。介護の現場の介護士はもちろん、医師や看護師といった関連性のある職種から指導を受ける側のシニア層も取得するといいます。すでに65歳以上の人口が21%を超える「超高齢社会」に突入し、さまざまな課題を抱える日本社会において、ゲームがどのような役割を果たしていくのか、注目していきたいところです。

(マグミクス編集部)