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哲学書に”ポプ子とピピ美” 「マンガ・アニメ表紙」は若者の活字離れを打開するか

独特の空気感で大人気になったマンガ作品『ポプテピピック』。作品のイメージとはかけ離れた、哲学者の表紙を飾り話題になっています。いったいどういう背景があるのでしょうか。

哲学書に『ポプテピピック』!?

『14歳からの哲学入門「今」を生きるためのテキスト』(河出書房新社)
『14歳からの哲学入門「今」を生きるためのテキスト』(河出書房新社)

 2019年3月6日に河出書房新社より発売された、『14歳からの哲学入門「今」を生きるためのテキスト』(著:飲茶)の表紙に、マンガ『ポプテピピック』に登場するキャラクター「ポプ子」と「ピピ美」のイラストが描かれ、話題を集めています。

「どんな偉大な哲学者も14歳の子供と同レベルである!」と大胆な解釈で2015年に発売された同書の文庫化に伴い、表紙に『ポプテピピック』が起用されました。
 
『ポプテピピック』とは大川ぶくぶ先生作の、可愛らしい絵柄とシュールなキャラクターが織りなす不条理ギャグが売りの四コママンガで、2014年より『まんがライフWIN』にて連載されていました。時事ネタやブラックユーモア、パロディを多用する表現法など前衛的な作風が特徴です。

 2018年1月から3月にかけてアニメも放映され、そのシュールな演出が話題を呼び、ニコニコ動画に配信されたアニメ全12話すべてが100万再生を超えるなど、大きな注目を集めた作品です。

 早稲田大学の教授で理学者の郡司ペギオ幸夫さんは、「ポプテピピック革命」という1万字もの論文を書いています。論文によれば「ポプテピピックは、存在と不在を区別しながらも両者の差異を無限小として混同し、存在と不在の間の、部分的な存在領域を不在の領域として書き換え、部分的な不在領域を存在と読み変えていく」とし、原作で行ったパロディをアニメ版でさらにパロディとして再構成するさまを”パロディ化の運動の渦”と定義しています。

 表紙に登場しているポプ子とピピ美は、書名と同じ「14歳」ですが、このような『ポプテピピック』の独自性もまた、哲学と親和性が高いと言えるかもしれません。

若者の活字離れを止めるか「マンガ表紙本」

『人間失格』(集英社文庫)
『人間失格』(集英社文庫)

 漫画家のイラストやキャラクターを本の表紙に用いるという手法は、過去にも行われてきました。集英社は2007年、太宰治の『人間失格』の表紙に、マンガ『DEATH NOTE』などで知られる小畑健(おばたたけし)先生のイラストを採用。他にも2008年に川端康成の『伊豆の踊り子』の文庫本表紙に『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズで有名な荒木比呂彦(あらきひろひこ)先生のイラストを採用しました。

 いずれもこうしたの試みは話題となり、『人間失格』は、3か月で10万部の売上を記録しました。

 明治大学文学部教授の齋藤孝さんは、マンガのこういった作用を「作品に引きずり込む力」と分析しています。当時、すでに「人間失格」を読んだという人が表紙に惹かれてもう1冊購入した事例があったほか、作品にも太宰治にも興味のない人が購入したという事例がみられ、どちらも購入の動機は表紙だったといいます。

『DEATH NOTE』では「人を殺すのはいけないことか?」という倫理的な問いが、一貫して作品のテーマとなっています。そうした問いに少なからず関心をもって作品を読み進めるファンが、小畑先生のイラストを入口に『人間失格』を手に取った時、太宰治が作中で提出する存在論的問いにも強い興味を抱くかもしれません。

 マンガのキャラクターや、漫画家が手がけたイラストが哲学や文学の書籍の表紙に用いられることによって、これまで哲学や文学に関心がなかった層も、これを入口に文庫本を手に取る機会をつくっているといえます。
 
 いわゆる「ジャケ買い」という昔から見られる購入動機ですが、マンガやアニメのビジュアルを活用して表紙を受け入れやすくすることは、若い世代の活字離れを打開するひとつの手法として、引き続き注目されていくことでしょう。

(マグミクス編集部)