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インモラルで切り拓け! 「夜サンデー」はWebマンガに新風を起こすか

2019年2月8日(金)にオープンしたマンガサイト「夜サンデー」。ユニークなコンセプトに込めた思いを小学館に聞きました。

秘めた願望を叶えるスマホという媒体

 単行本化のみならず、アニメ化される作品も続々登場するなど、注目が集まるWebマンガ。スマホで気軽に読める便利さから、多くの人が利用しています。このほど、小学館の少年誌「サンデー」のブランドを冠し、”夜に読んでほしいマンガサイト”というコンセプトを掲げる「夜サンデー」がサービスを開始しました。

「夜サンデー」ロゴ(画像:小学館)
「夜サンデー」ロゴ(画像:小学館)

 毎晩18時になると、サンデー関連の漫画作品が掲載されているWebマンガ媒体「サンデーうぇぶり」に、忽然と入口が開かれ、翌朝6時に入口が消えるというユニークなサイトです。先立って、集英社が実際の地図と連動したWebマンガアプリ「マワシヨミジャンプ」をリリースするなど、Webマンガにおいて新しい実験的試みが広がりつつあるなか、どのような経緯で誕生したのでしょうか。小学館「サンデーGX」編集部デスクの前田一聖さんに話を聞きました。

――「夜サンデー」サイト開設の経緯をお聞かせください。

前田一聖さん(以下敬称略) 「週刊少年サンデー」「ゲッサン」「サンデーGX」という、サンデーの名がつく編集部で運営するアプリならびにウェブブラウザサービス「サンデーうぇぶり」があるのですが、そのなかで主に掲載されているのは、いわゆる少年誌的な作品が多かったんです。

 サンデーというブランドには、上の年齢層に向けたヤング誌「ヤングサンデー」があったのですが、今から11年前の2008年に休刊しました。編集部内で「中高生以上の刺激的な作品を求める読者に対応できていないのではないか?」という声があり、ブラウザで”インモラル”という切り口で新しく始まったのが「夜サンデー」です。

――刺激的な作品が求められているということですが、そうした声が読者からあったのでしょうか。

前田 紙で売れるマンガとWebで売れるマンガというのは、最終的には近くなりますが、やはり違いもあります。Webで売れているマンガは、刺激的なものが多いです。例えば、「夜サンデー」の話が持ち上がった時には、『金魚妻』(黒澤R/集英社)という不倫を題材にした作品が非常に話題になっていましたし、ガラケー時代には『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』(本名ワコウ/小学館)という「覗き合い」をテーマにした作品が大ヒットました。

 これは個人的な見解ですが、スマホで見るというのは、すごく私的な作業だと思うんです。刺激的な作品をスマホでこっそり見ていても、気づかれることは少ない。しかし、紙だと家族や友人にバレてしまいます。

 通勤中の電車でスマホを覗いている人はいますが、その人たちは、友達とLINEをしているかもしれないし、仕事の企画書の整理をしているかもしれないし、何かの論文を読んでいるかもしれないし、エッチなサイトを見ているかもしれない。”ダメだとわかっているけどやってみたい”といった、あまり大きな声で言えない欲望を扱っている作品は、スマホで読むのに向いているのだと私は思います。

『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』第1巻(小学館)
『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』第1巻(小学館)

――スマホの性質が、刺激的な作品に合致したということでしょうか?

前田 たとえば生活保護をテーマにした『健康で文化的な最低限度の生活』(小学館)という、小学館漫画賞を受賞してドラマ化もされた作品があるのですが、その作者の柏木ハルコ先生が2000年に描いた『花園メリーゴーランド』(小学館)という刺激的な作品が、電子書籍で非常に売れました。過去の作品が、新たに掘り起こされたんです。 

――古い作品が新しいものとして掘り起こされたことは、作り手側からすると意外な反応でしょうか?

前田 そこまで意外ではなかったです。すでに音楽での分野では起きていることかなと。Apple Musicでは作品が並列に表示されていますよね。私も親戚の高校生の子に「いま、どんな音楽を聴いているの?」と尋ねたら「今は石川さゆり」と言われて驚いたことがあります。これは極端な例ですが、流行はもちろんありつつ、みな自分の好きなものを読む。作品が並列に並べられることで、新しい読者がついたということだと思います。

【画像】密やかに楽しみたい? "インモラルな" 連載作品

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