インモラルで切り拓け! 「夜サンデー」はWebマンガに新風を起こすか
密やかに秘めやかにこっそり読んでほしい

――夜限定ですが、時間帯については、マーケティングに基づいて決定したのでしょうか?
前田 これは内緒ですが、夜限定とうたいつつ、実はいつでも見られます(編集部注:「夜サンデー」に直接アクセスすれば、18時~翌6時以外の時間帯でも作品を閲覧可能)。「夜に読んでほしいマンガサイト」、有名な某浜松銘菓と同じような言葉だと思っていただければと思います。
詳細なリサーチというのはしていません。単純に「おもしろい」というのが理由です。街を歩いていて、深夜しかやってないごはん屋さんとか、昼はラーメン屋だけど夜だけ居酒屋になっているとか、そういうのって気になりますし、ワクワクして入りたくなりますよね。色んな作品が載っているだけのサイトではなく、そこに遊び心があるようにしたいという想いがあります。また、刺激的な作品が好きではないという読者への配慮もあります。「うぇぶり」から「夜サンデー」に入る時に注意文が表示がされるのはそのためです。
――作品の選定は、どのように行っているのでしょうか。また、その際に気にかけていることはありますか?
前田 「インモラル」という切り口に沿った作品を掲載しています。いわゆる名作と言われている作品も復刻連載しています。『ヒメゴト~十九歳の制服~』(峰浪りょう/小学館)『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』(本名ワコウ/小学館)『クピトの悪戯 虹玉』(北崎拓/小学館)といった、ゼロ年代中盤から10年代前半にかけて、話題になった作品です。
刺激的な作品というのは、非常に取り扱いが難しいです。やりすぎたらもちろんだめですし。「インモラル」をテーマに掲げた際にある先輩が言っていたのは、「アンモラルになってはいけない」。「インモラル」というものは、良識は持った上で、それに反することをしてしまうということ、「アンモラル」は単に良識に反していること……「インモラル」っていうのは、言ってみれば深夜に食べるラーメンですかね(笑)。「やっちゃダメけど、やってしまう」というせめぎ合いがある。そういった線引きを持っています。

――反響はどうでしょうか?
前田 ……非常に密やかですね(笑)。コメントや「いいね」のつき方からみて、おそらく見てくださる方は「サンデーうぇぶり」よりは少ないです。あまりそこは大々的に宣伝するものではないと思っているので、密やかに秘めやかに、こっそり読んでほしいなと思います。
* * *
2018年に刊行された「電子書籍ビジネス調査報告書2018」(インプレス総合研究所)によれば、電子書籍の市場規模は、およそ2500億円を超えているとされており、今後ますます拡大を続けていくと予想されます。一方で、電子書籍の利用が進むにつれ、アプリやサービスの差別化や細分化が進んでいます。「夜サンデー」のような斬新なコンセプトのサービスは、競争が激化するwebマンガのなかで新たな価値を生み出す試みとして、今後も注目を集めることでしょう。
(マグミクス編集部)